第拾伍幕の漆
嫌な奴らに因果応報!
それに対比するかのように、F組では麻生が同じリレーで走ったメンバーを中心に失態を責められていた。最下位だったことよりも、走り終わった第一走者が待機場所で麻生の走りを見ていたところ明らかに小豆畑の脚を引っかけるようにしていたと証言したことを発端とする彼の卑怯な手口への怒りが主だった。
これが事実であれば、卑劣極まりない行為である。だんまりを決め込む麻生をクラス中が糾弾する中かりんはおろおろするばかりであったが、彼の不服そうにしていた顔を見て記憶がつながっていく。
「(この表情……あのときの! じゃあ天宮くんと瑞江ちゃんは……つながった!!)」
何も言わず麻生は座るが、居心地の悪さは今まで以上であった。
「(僕は悪くない、悪いのはあいつなんだ。そうだ、ここまでうまくいってるついでにあいつを……!)」
勝てば官軍負ければ賊軍。交錯の後明暗が分かれた2クラスは、ムードが正反対の状態で次の競技を迎えた。
怒りに任せクラスを離れていた淡路は、自分の暴走を棚に上げてトイレの個室にこもってクラスの不真面目さに涙ながらに怒りを募らせていた。
「なんで、なんでこんなに責められなきゃならないの!? 私は頑張ってる、なのにみんながついてこない、悪いのは私じゃないのに……!!」
まだ心の中は怒りの炎がくすぶっていたが、そろそろクラスに戻ろうと彼女は個室を出て、洗面台で手を洗う。すると、鏡に見覚えのある自分以外の顔が映り、そこから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「あーあ。例によって悲劇のヒロインぶっちゃって。あんたって昔と全っ然変わってないんだね」
淡路が鏡に映った顔と声が誰なのか気づいた途端、顔を真っ青にする。声の主は彼女のことを昔から知っている口ぶりだった。
「な、なんであんたがここに……!? あんたは確か……!?」
記憶と照らし合わせると現実ではありえないことが目の前で起きて混乱する淡路に、それを否定する言葉が突き刺さる。
「半分正解で、半分間違いってとこかな。自分がしてきたことがどういうことだったのか、思い知らせてあげる。負の感情よ、その姿を顕現せよ! はっ!!」
彼女は自らの羽根を1枚引き抜いてから、ネガボットの素体と振袖のカケラを取り出し、それらをまとめて淡路めがけて投げつけた。相手の都合を考えようともせず、彼女にとってはこれまでの自らの行為の逆の立場に立たされた因果応報を受けたといえる瞬間でもあった。
淡路と同じく、怒りに身を任せている八角は肩を怒らせながら担任を持たない教師が座る席に戻ろうとしていた。
「楽しいショーをありがとうございました」
数日前に聞いたばかりの声。八角が振り向いたその刹那、四角い物体と結晶体が彼女に向けて投げつけられた。彼女が気を失う直前の彼の顔は、冷たい目をしていた。
「獅子身中の虫になってもらいましょうか」
淡路から作られたネガボットは宙に浮いた巨大な両手首の形をしており、創造主に向けて指先から糸を放つが、羽根を放ち切られてしまう。
「もとがもとだけにいい度胸してるじゃない。あんたのおもちゃだったらグラウンドにいっぱいいるから、行っておいで!」
狼藉をしでかしたネガボットとその材料にされてしまいぐったりと床に倒れている淡路の体を見て軽蔑した表情を浮かべたプチッツァは、飛び出していったネガボットを追いかける。
あれ?プチッツァ、淡路と知り合いなの?こいつは面白くなってまいりました!




