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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第拾伍幕「混沌」
232/247

第拾伍幕の陸

ちょっと男子!ちゃんと歌って!!ならぬ、ちょっとみんな!ちゃんと応援して!!

 障害物競走が終わり、戻っていく場所であるスタンドが目に入った二人は生徒たちの席にやけに空席が目立つことに気づく。

「どうしたんだろ?」

「何かあったかもね。やばたんな匂いがする」

 次は蓮が出場する男子のリレー。蓮と入れ替わりにスタンドに座るさくらは休憩しつつ応援しようと思ったが、そうは問屋が卸さなかった。

「さくら! 幼馴染の出番だよ! 応援しないでどうするの、立って立って!!」

 半ば強制的に立たされるさくら。その強引さにはクラスの大半がドン引きしていた。さすがにこれには周りが黙っていられなかった。

「おい淡路、お前いい加減にしろよ!」

「もう我慢できねえ。お前に指図されんのうんざりだわ」

「俺たちだっていろいろあるのにそっちの都合で練習ばっかりしたんだ、お前のための体育祭じゃないんだぞ?」

「こんなんじゃみんなが活躍できる体育祭にならないよ!」

 張り切ることは悪いことではないが、これまで行事に熱くなっている淡路が自分の都合だけで朝に放課後に練習漬けにされて振り回されたクラス、主に男子たちを中心に集中砲火を浴びる淡路。今まで彼女が「クラスのために」という大義名分のもと繰り広げてきた自己陶酔という名の横暴に業を煮やしたのか、曲がったことが嫌いな清美たちをはじめとする一部の女子ですらも加勢するほどだった。険悪な雰囲気に桃香やあおいもあわてて間に入ろうとするが、振り回された側の溜まっていた鬱憤はちょっとやそっとでは収まるはずがなかった。

「淡路さん、あなたが頑張ってきたのはよくわかってる。でももう少しみんなのことを……」

「先生までそんなこと言うんですか!? 私はみんなのために、クラスのためにこんなに頑張ってるのに……!! もういいわよ、あんたたちのことなんて知らない!!」

 ヒステリーを起こし、スタンドを後にしていく淡路。一部の男子の中にはその背を見て清々するといった表情を浮かべる者もいたが、彼女を擁護する一部の女子と口喧嘩を始めてしまう。一致団結など夢のまた夢な状態になってしまったクラスに、さくらとあおい、そして桃香は再度の一致団結なしには勝利もないと感じていた。

 一方のリレーでは、B組男子選抜はスタートダッシュでそこそこの滑り出しを見せて、中位でのスタートとなった。だが、第2走者である小豆畑がすぐ前を走るF組を追い抜いた、と思ったその時であった。彼とF組の第2走者である麻生が交錯、両者ともに転倒してしまうアクシデントが発生する。

 その間にB組とF組は後続に追い抜かれ、最下位争いに叩き落されてしまう。しかし、B組は第3走者を務めた野球部では2年生ながら既に外野の一角のレギュラーを務めている遠藤祐治(えんどうゆうじ)が披露した俊足と、アンカーの蓮による華麗な3人抜きでなんとか4位に滑り込む。これにはクラスや学年の壁を越えて歓声が沸き上がる、だが、F組は麻生が転倒して膝をぶつけた痛みと事故で倒されたことに呆然としてなかなか立ち上がれなかったことが災いしそのまま最下位でリレーを終える結果となった。

 優勝したクラスであるE組のアンカーである陸上部のスプリンター石神葦都(いしがみよしと)は蓮との一騎打ちを望んでいただけに勝った喜びの中に肩透かしを食らったような表情をしつつ、麻生に向けて苦々しい視線を送っていた。

 蓮と遠藤の帰還に、B組のクラスメイトと担任は拍手で迎える。

「すごいよ蓮! 私、蓮なら絶対やってくれると思ってた!」

「遠藤、やっぱお前足速いな!」

「二人ともかっこいいー!」

 一躍ヒーローとなった二人だったが、その後ろで小豆畑は小さくなっていた。そこに、さくらが声をかける。

「小豆畑くん、大丈夫! みんな小豆畑くんが全力出してたのわかってる! 走ってたときの熱い気持ち、伝わったよ!」

 自分の胸に拳を当て、さくらは彼の情熱が伝わったことをアピールする。大失敗した後ではあったが誰もそれを責めようとしていなかったこともあり、気持ちの軽くなった彼はどこか救われた気がした。

女子が熱くなるイベント第一位である合唱コンクールで自分でピアノ弾いて引っ張るタイプとただキーキー騒ぐだけの両方に遭遇しましたがさくらは前者に近いですね。モデルにはしてませんが淡路さんは後者型。

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