第拾伍幕の伍
桃ちゃん先生と百合先生を見ればわかりますが、この学校は生徒のことを考えてないゴミ教師だらけではないです。
スタンドに戻る道すがら、岩下が増田に問いかける。
「増田先生は、最初から信じていたんですよね?」
「ええ。天宮は一見悪そうに見えますが、あんな卑劣なこと絶対しませんから。だって……」
そう切り出したのは、かりんが退学寸前に追い込まれた時のことだった。前年も天宮と瑞江の担任だった増田は、事件のことを聞きつけた二人に真相を教えてくれとかけあっていたのだ。しかし、この事件については校長から教師全員に緘口令が出されており一教師以前に一人の大人としてはなんとかしてやりたかったがどうしようもできなかったと悔いていたことを岩下に語った。
「木谷自身も別人のように元気になりましたし、天宮も最近生き生きとしている気がしてたんです」
「もしかすると、小町部のおかげかもしれないですね」
増田は、電話をかけながら教え子たちが待つスタンドに戻っていく。教師たちの間からも、だんだんと小町部の存在や活動が知れ渡ってきている昨今、彼女たちが活動していることで校内に良い影響が出てきていることに気づいている人々も現れてきていた。
増田と岩下の生徒を信頼した言葉は、たまたまスタンドを離れ事を済ませていた片桐が二人とすれ違い、耳にしていた。
「(こいつはまずいな……そろそろ動き出すか)」
体育祭に参加する意義を見出せず、輪に加わっていても空しいだけの応援に嫌気が差した京田はクラスを離れ、通路をうろつきながらサボるための人目に付かない静かな場所を探していた。そこに、オリエント・ゾディアックのニューフェイスである金色のキツネを模した怪物と銀色のタヌキを模した怪物、ズウォートとムングが現れる。ムングの腰には、瓢箪がつけられていた。
「な、何だお前たち!」
「どうやら君はこの体育祭をなくなってほしいと思っている。そうだろう?」
京田は図星を突かれてうろたえるが、彼らからある提案をされる。その内容は、彼にとってはまたとない機会だった。
「いいだろう。乗った」
「これで君も仲間だ。その印にこれを……負の感情よ、その姿を顕現せよ! はっ!!」
ズウォートはネガボットの素体と振袖のカケラを京田に投げつける。だが、普通であればネガボットにされる人間は口から黒い煙が出て、意識を失い倒れ、煙と素体からネガボットが作られていくはずが、素体は彼の体を拒絶し彼の掌に戻っていき、崩壊した。想定外の事態に、怪物たちは混乱する。
「これは……どういうことだ!?」
陰から新たな仲間ができることを見守っていたチュイですら、前代未聞の出来事に呆然としていた。彼はすぐスマホを取り出し、カルネロに連絡を試みる。電話に出た彼は興味深そうに話を聞いてからこう返した。
「……その少年は我々の野望を果たすキーパーソンになる可能性がある。だが、今はまだそのままにしておけ。ただし、目はつけとくように」
それだけ言ってカルネロは電話を切る。
「これで3人目だ。話に聞くところではあれと合いそうだが……まだ準備に時間がかかりそうだな」
PCのスクリーンセーバーに大きく掲載された釈迦如来を描いた絵画を見つめながら、再びカルネロは研究を進めていった。
ズウォートとムングに続く新たな敵が出て来る予感、ここでモチーフを当てられたあなたはすごい!




