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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第拾肆幕「疑念」
223/254

第拾肆幕の拾壱

行事の本番はいつも学校生活における苦しみの一つから始まる。

 帰宅した片桐は、自室で今回の戦利品であるリボンをカバンから出す。そしてこれまでに手を染めた犯行の戦利品を、まるでパズルのピースを組み合わせるかのように実際に人が制服を着ているようになるように並べていく。最後にリボンを制服の上着に乗せて完成させ、達成感に浸る。

「これ……誰に着てもらおうかなぁ……」

 普段の彼からは想像もつかないような邪悪かつ捻じ曲がった欲望を全面に出した表情が彼の部屋に広がっていった。

 ヘレン・ケラーもびっくりな三重苦に見舞われた小町部、しかし時は待ってはくれない。いよいよ体育祭の当日がやってきたのである。

 それぞれのクラスごとに生徒がデザインしたクラスTシャツを身に纏った生徒たちが体育祭の舞台である「東京グラジオラス陸上競技場」のグラウンドに続々と姿を現し、クラスごとに整列していく。それは誠治をはじめとするこれまでの騒動で負傷し競技に出場できない生徒たちも例外ではなく、各クラスの担任教師ももれなく生徒たちと同じクラスTシャツを着て、団結の意思を表していた。これまでの経緯から、オリエント・ゾディアックや二人組の怪物が体育祭を襲撃に来る可能性も十分考えられたためイナリはさくらのカバンの中で息をひそめて有事の際に備えてスタンバイしていた。2年F組の列にかりんが並ぶが、その中には智彦と瑞江の姿はなくクラス全体もそのせい全員集合できず気落ちしたムードが漂っていた。それに対し、麻生はそんなことお構いなしに堂々と列に並び、D組の列には片桐が彼と同じような表情で並び、麦倉は彼を犯人だとは知らないが真犯人への怒りを噛み殺しながら列の中で体育祭に臨む決意を固めていた。

 整列が終了し、教師陣も揃ったところで開会式が開始される。まずはどの行事でもお約束の校長の話が始まる。

「えー本日はお日柄もよく……」

 ありがちすぎる定型文の通り、まだまだ夏本番はこれからだというにもかかわらず体育祭日和ともいえる燦燦の太陽が照らしていた。長ったらしく中身のない校長の長話は、グラウンドに立って話を聞いているが準備運動すらもまだの生徒たちの体力をじわじわと奪っていた。話を聞いていたかりんは話が始まってしばらく経つと頭痛が起こり始め、このまま立ち続けて話を聞くのは困難になってきた。ふらふらとしている彼女を心配した後ろの生徒が声をかけようとした瞬間、グラウンドをはじめとする会場中にたまっていたフラストレーションがかりんのすぐ近くで大爆発を起こした。

「そんなくだらねー話さっさと終わらせろよ! こっちは足を怪我してんだぞ!!」

 あまりの苛立ちに、松葉杖を使いながらグラウンドに立っていた一人の男子生徒が怒号をあげたのだ。怒号の主の名は小菅貴昭(こすげたかあき)。2年E組の生徒で、諸事情で強豪校から転入してきたサッカー部のエースストライカーだった。しかし彩羽高校が最初にネガボットに襲撃された際に瓦礫で足を負傷しており、それがまだ治っておらず松葉杖を使いながら立って話を聞いていた。怪我人の彼が座ることすら許されない雰囲気は、聞きたくもない長話を聞かされている生徒達には悪影響だった。

「早く始めろー!」

「この厚化粧ババアー!!」

 彼の怒号が嚆矢となり、一部の生徒たちが学年や性別の垣根を越えて校長に対しての野次やブーイングを少しずつ飛ばし始め、それがだんだんとエスカレートしていく。そんなことお構いなしに自分の世界に酔っている校長は話を続け、彼女の身勝手な態度と野次やブーイングの両方に辟易し顔をしかめる生徒たちが大多数を占める不穏な始まりとなってしまった。教師たちは生徒と上司の両方の暴走を止めるべく行動を開始するのだが、多くの声が飛び交っているこの場では誰がどんな野次を飛ばしたのかが特定できず完全にいたちごっこになってしまっていた。

 だが、この荒み切った混沌が生まれようとしていた空気をぴたっと収め、がらっと変える一人の人物が現れる。

この校長は私が通っていた小学校の校長がモデルです。毎週月曜は厚化粧ババアによる長話を立って聞かされるところからスタートしてました。

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