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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第拾肆幕「疑念」
221/247

第拾肆幕の玖

宇宙刑事が引きずり込まれるような空間での出来事です。

 かりんはスキロスによって作られた霧の中に囚われ、振袖小町になっていたはずだった彼女は変身を解いてもいないのに制服を着ていた。そこに、かつてかりんの在学が危ぶまれる事態に陥れられた二人組が目の前に現れる。

 彼らによる罵詈雑言に、かりんは耳を貸さずにやり過ごそうとするが、そう一筋縄ではいかずどこからか彼女が耳にするのも嫌な声がどこかから聞こえてくる。

「あなたが我慢すればこの件は丸く収まるの。それにこの学校には……」

 エンドレスで聞こえてくる利己的で偽善的で無責任な声。その主の姿は見えなかったが、それだけでも彼女には大きなプレッシャーとしてのしかかってきていた。それをBGMに男子生徒が襲いかかる。

「来ないで!!! 聞きたくない!!!」

 耳を塞いで逃げるかりんを一人が追いかけ、もう一人はかりんの逃げる先々に竹刀を片手に神出鬼没に現れ、彼女に竹刀で執拗に打突していく。その動きたるや経験者のそれであったが、たとえ幻影であるとはいえその一撃は竹刀に対しての敬意や礼といったものが微塵も感じられない扱いであった。

 それを空からプチッツァが文字通りの高みの見物をしていた。

「ふーん、スキロスもなかなかやるじゃん。でも今やられちゃうといろいろまずいから、危なくなったら乱入するかな」

 かりんは恐怖とトラウマの中、自分の中にある勇気をすべて振り絞り、足を止める。手も耳から放し大きく広げる。

 追いかけていた方の男子生徒の幻がチャンスとばかりにかりんに襲いかかる。そして竹刀を持った男子生徒の幻が彼女の背後に立ち彼女の後頭部を竹刀で狙おうとする。

 走りながら向かってくる幻の顔がパーソナルスペースを突き破ってきたその時だった。かりんはすぐさま横に移動する。走ってきた勢いが強すぎたあまり止まることができず、二つの幻は衝突しあう。そして幻はさっきまで人間の姿をしていたのが嘘のように粘土細工の如く崩れ去り、消失していった。

「もう私は、あの頃とは違う!」

 叫びとともに幻の空間が崩れ、もといた部室棟の屋上にかりんは戻ってくる。服装も振袖小町のものに戻っていた。

「私の幻影を破った!? 馬鹿な!!」

 幻影から戻ってきたかりんにスキロスはたじろぐ。プチッツァも彼女が自力で戻ってくるとは思わず拍手を送り、その音で彼女がいることに気づき上を向いたスキロスは眉間にしわを寄せていた。

「あんなものに私は惑わされない!」

 かりんは迅弓・萌葱を出し、スキロスが持つ2枚の写真を矢で貫く。スキロスは思わず写真を手放し、吹き飛ばされ部室棟の屋根に矢が突き刺さる。写真は両方ともど真ん中に穴が開いていた。

「こうなってしまっては私の出番は終わりですね」

 必死に悔しさを隠しながらスキロスは姿を消す。

「あの写真、何のだったんだろ……あれ?」

 写真を確認しようとしたかりんだったが、急に全身の力が抜け本当に変身が解け、矢も消失し穴の開いた写真は風に吹き飛ばされる。そしてそのままふらふらと足取りがおぼつかなくなり、屋上から思わず落下してしまう。

 その光景を目の当たりにしたプチッツァに、ある忌まわしい記憶が脳裏をよぎる。敵であることはわかりながらも急降下しようとするが、その必要はなかった。

あの頃とは違うとは言ってもやはり負担は大きかった模様、トラウマを打ち破るのは簡単なことではありません。

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