第拾肆幕の伍
新幹部、誕生。
この日片桐と麻生は、廃研究所に迎え入れられた。セルペンテがカルネロに根回ししたところ、彼らを歓迎したのである。
「ようこそ、オリエント・ゾディアックへ。おっと、君は初めましてじゃなかったね」
カルネロは麻生に問いかける。彼の悪意に満ち溢れた心に気づき、ネガボットを体内に帰省したのはカルネロだったのだ。
「ふん、こいつらは俺たちといろいろ違うじゃねーか。戦力になるのか?」
「私も反対。これ以上競合相手増えるとか勘弁して」
セルペンテとプチッツァの反対に、片桐と麻生の体からは憎悪の炎を表すかの如く禍々しい色をしたオーラがあふれ出す。それに思わずセルペンテは後ずさりし、カルネロはそれにさらなる感銘を受ける。
「俺は相手が何人いようがさくらを射止められる自信がある。一向に構わないぜ」
「僕が連れてきたんだ、絶対戦力になるはずだよ」
スカウトマンであるチュイの後押しを受け、まずはお手並み拝見となった。
「カルネロ、彼らのコードネームはどうしましょう?」
オリエント・ゾディアックのメンバーたちは、それぞれ本名とは違うコードネームを名乗り活動している。自分の持つ振袖のカケラに宿った十二支の動物をそれぞれ外国語にして名乗っているが、彼らに寄生しているネガボットはそうではないため別の方向から考える必要があった。
「そうだな……」
自分の持っている知識を脳内で動員させるカルネロ。少しの空白が終わり、まず片桐の方に顔を向ける。
「君はズウォートだ」
聞き慣れない響きの言葉だが、彼から与えられた名前に魅力を感じた片桐はそれを受け取る。そのままカルネロは麻生の方に顔を向ける。
「そして君は……ムング」
「よろしくお願いします」
片桐学改めズウォートと、麻生明大改めムング。この場にいない者もいたが新たな仲間として二人は拍手で迎えられた。
「次の作戦なんですが、僕にいい考えがあるんです。この中に人の姿を変えることができる方はいますか?」
「それなら私ができますが」
スキロスが名乗り出ると、大詰めでセルペンテの姿を霧に包み、プチッツァやチュイ、ティーガーの姿に次々と変化させる。変えられている本人や自分と同じ姿を目の前に出された若者たちは嫌そうな顔をしていたがスキロスはお構いなし、元の姿に戻されるまでに何度も姿を変えられてしまっていた。
「素晴らしいです。ではこれを渡しておきます」
そう言って麻生が取り出したのは数枚の人物を撮影した写真だった。写真についての説明が終わると、ズウォートの作戦のプレゼンテーションが終わる。この作戦を実行に移すことが決定した。
「……もうこんな時間か。おい、一応仲間には入れてやるがな、お前たちにも保護者がいるだろ。用があるときはこっちから呼ぶようにはするが、ここはガキの溜まり場じゃねえから普段は自分ちにいろ。いいな?」
プレゼンが終わり、窓から見えた空を見たセルペンテの忠告に従う二人。だが両者とも彼から子ども扱いされたことに怒りをにじませていた。
不本意ながらも帰らされる二人の背中を見たプチッツァは、自分に似た部分が彼らにあると感じていた。
培養槽から救出されたキマ、ゴーダ、ハンジールは、救護室のベッドに寝かされていた。永い眠りから、ゴーダが目を覚ます。
「うーん……長いこと寝てたみたいだが……」
「あら? 目が覚めたかしら」
救護室ではボヴィーニがコーヒーを沸かし、コーヒーカップの代わりにビーカーに注いでいた。その匂いでキマも目が覚める。
「いろいろされた気がするけど、何も覚えてないのよね。何か体に差し障りがなければいいけど」
ハンジールも目が覚める。だが、何も言わず力任せにドアを開け去っていった。
「……どうしたのかしら?」
キマのふとした疑問に、ボヴィーニは手元が狂い注いでいたコーヒーを手にこぼしてしまった。
「おい、大丈夫か?」
「あたしたちは普通じゃないから火傷なんてしないけど、それでもあなたの柔肌にはよろしくないんじゃないの?」
「気にしないでいいのよ。ほらほら、休んでて」
ボヴィーニは平気なふりをしているが、心の奥底では侮れない奴がいて厄介だと自分の手を見て考えていた。
名前は金と銀をポーランド語とモンゴル語にしたものです。金と銀、一体何の意味が……?




