第拾肆幕の弐
技術者はいなくてはならないけど、素行調査はしておこう。
「……これはどういうことだ」
ロンは、電話に出ることができない、というよりも出ている場合ではない事態に直面していた。
キマ、ゴーダ、ハンジールが囚われている培養槽を指差して問い詰める彼に、カルネロは悪びれずに答えた。
「我々のこれからのための研究さ。世界を創りかえたところで、絶対に反逆者は現れる。その対策だよ」
「仲間を拘束して得る未来? そんなものがあってたまるか!」
「君も何か未練があったから今ここにいるんだろう? 何かを成し遂げるためには犠牲はつきものだ」
ロンの首にかかっているロケットを指差すカルネロ。拳を握り締めるロン。
「……貴様の考えはよくわかった」
そう一言つぶやいた直後、ロンは抜刀しカルネロに刀を向ける。
「それは俺の考えとは相反するものだとな!」
「ならばその考えが間違っていると教えてあげよう! 踊闘苦肉!」
カルネロはライドアーマーから弾丸を乱射する。それをロンは日本刀で跳ね返し、薬莢が次々と床に散乱していく。流れ弾がゴーダとキマ、そしてハンジールが囚われている培養槽に当たりひびが入る。そしてそこから培養液が少しずつ漏れ出す。
「(今なら助けられる!)」
決意に満ちた目をしたロンは刀を強く握りしめる。
「牙竜天睛!」
培養槽にできたひびの部分を狙い、ロンは培養槽を刀で切り裂く。ゴーダ、キマ、ハンジールは、こぼれた大量の培養液とともに切り裂かれた培養槽から倒れこむような形で放り出される。まだ意識は戻っていないが、ロンは彼らが自由を取り戻すことができたことに手ごたえを感じていた。
「……この3人からはもう必要なデータは手に入っている。だがロン、辰の力を持つ振袖のカケラを持つ君からもデータが必要なんだよ」
カルネロが指を鳴らすと、研究室の入り口が開いてボヴィーニが現れる。
「発砲美人……」
小声で大詰めを発動させたボヴィーニは胸部から光線を放ち、ロンに命中させて失神させる。カルネロは失神し倒れたロンをライドアーマーのアームでつかみ、無傷の培養槽に閉じ込める。
「これでよかったのかしら?」
「協力感謝するよ。これであと二つデータが手に入れば、あの計画を開始することができる……!」
カルネロとボヴィーニのどす黒い笑いが、培養槽の破片とこぼれた培養液で床が大きく荒れた研究室に響き渡る。
カルネロはロンが持っていたロケットが培養槽に入る直前に落ちたのを見つけると、ライドアーマーで踏みつける。その中に入っている数年前のものとみられる百合の写真もろとも、ロケットは大きくひしゃげてしまった。
倫理観は大切に。




