第拾参幕の拾壱
勝者の栄光の影に敗者の悔恨あり。
智彦に負けた相手は、ひとりぶつぶつと恨み節を吐きながら街を歩いていた。その異様な不気味さに、街を歩く人々は奇異の目で見つつ遠巻きにしていた。
「俺が悪いんじゃない俺が悪いんじゃない俺が悪いんじゃない」
彼の周りに近寄ろうとする者は皆無のまま彼は雑踏に消えていく……と思いきや、悪魔のささやきが彼の前に一つの影として現れる……。
そして彼は何事もなかったかのように再び歩き始める。そこに、着せ替え人形としての役目を終え、へとへとになって帰ってきた蓮が反対方向から歩いてくる。
猫背で下を向いて歩いていた彼は、疲れてとっさに避けられなかった蓮とぶつかるが謝りもせずにそのまま去っていく。
「なんだあいつ! ……うちの制服だ……」
ぶつかった相手の背を見て、同じ学校にあんな失礼な奴がいたとはと思いその背中を見ていた蓮に、同じく家路についていたアイリスが声をかける。
「蓮くんお疲れみたいだね」
「アイリスこそ、なんかあったみたいだけどどうした?」
「実はね……」
情報共有しながらそれぞれの家を目指す二人。気づくともう水崎家の目と鼻の先に着いていた。さくらの家の窓から二人の姿を見かけたイナリは、窓を開け外に向かって飛び降り、道路に着地。二人を迎えに来た。
「あら、イナリちゃん」
「おかえり、アイリス、蓮……」
二人が近寄った途端、イナリは彼らから形容しがたい悪意をかすかに感じ取り体中が震えだし、二人から逃げるように距離を開ける。
「イナリちゃん、どうしたの?」
「……ちょっと距離を取っていい?」
何かあったのだろうと思いソーシャルディスタンスとしてだいたい2mほど離れて体の震えが起きたであろう推測を語り出す。
「二人が帰ってくるまでに会った人たちの誰かがネガボットにされてる……というか、自分から進んでなったみたいで、その匂いが二人に薄っすらついてるのを感じたんだ」
自分からオリエント・ゾディアックに協力する人間が現れた、この事態は小町部を狙う勢力と関係があるのかと蓮は疑問に感じていた。
「イナリ、どのくらいの距離まで近づけばその匂いが付くかわかるか?」
「確実なことはわからないけど、かなり近くにいたんじゃないかな」
今日一日に自分の近くにいた人物を思い出していく二人。簡単に言ってもたくさんいて特定はできないため今は警戒を強めるしかなくもどかしく感じていた。
全員が帰宅してから、かりんは最後の対戦相手が同じ学校の人物であるため気を付けた方がいいと智彦に連絡した。もともと彼は普段から見た目や不愛想な態度で怖がられることが多く、それを理由に色眼鏡で見るような真似をしなかった彼女には感謝していた。それを伝えようと文章を入力していくが、そんなこと言えるはずもなく削除を連打する。思わぬ形で校内に敵ができてしまった、だがそれが誰なのかわからないことと小町部を裏切ってしまうのではないかという不安が彼に忍び寄っていた。
主人公が在籍してる変な部活って主人公と面識のない一般生徒はどう思ってるんでしょうね?って言う疑問からこの展開が始まりました。




