第拾参幕の拾
高校生の青春の一つ、みんなでプリクラ。
「天宮くんが勝った……んだよね?」
小町部とその助っ人は揃って首を縦に振る。歓声の渦の中、台パンをして悔しさと怒りをあからさまにして対戦相手は何も言わず席を立ち、ゲームセンターを後にした。
「ムカつく相手だった……」
本音を吐露していた智彦の右手首を店員が取り、ボクシングのレフェリーの如くあげさせる。
「えーと、お名前は……」
「……ピーター・ヤング」
こっ恥ずかしかった智彦はとっさに思い付いた偽名を名乗り、なってしまったものはしょうがないとギャラリーからの拍手とチャンピオン認定証とメダルを謹んで受け取った。
「とりま、ムカつく相手のことなんて忘れてみんなでプリ撮ろうよ!」
「賛成!」
フロアを移動し、小町部とその助っ人2名はプリクラコーナーへと向かった。そこでは他校の女子高生のグループが複数先客としており、活気に満ち溢れていた一方助っ人二人は女子だらけの慣れない空間にいてどこか気まずさを感じていた。
「金丸さーん、機種どれにするー?」
かんなの正体を知らない誠治は何の気なしにプリクラの機種選びを頼むが、プリクラに機種という概念があったこと自体知らない彼女は、とっさに目の前にあった機種を指差す。
ぞろぞろとプリクラの筐体に入っていくが、やはり6人ともなるとかなり窮屈だった。パーソナルスペースを保つのがかなり厳しかったが、画面内に全員が入れたことを確認する。誠治は図らずもあおいと隣同士になり、彼女の顔がすぐ近くにある状態に心拍数が上がりつつもこんなことが前にもあったような感覚になる。蓮以外の男子が苦手なあおいも、誠治が近くにいることに不思議と悪い気はしていなかった。
自分が恋のキューピッドになりつつあることなどつゆ知らず、さくらは智彦に認定証を持たせ、彼の首にメダルをかけてから撮影する。
「ここは私に任せて」
コスプレの撮影で加工はお手の物のかりんの手によって不自然にならない程度の加工をしてから各自のスマホにデータを転送する。昨今の流行ではなかったが、さくらはいわゆる落書きに挑戦。迷わず決めていた内容の短文を書いてから人数分のシールが筐体から出てくる。それも各自のスマホにデータが転送され、そして各々がパーソナルスペースを確保する。
「やっぱりさくらならこう書くと思った」
あおいが笑っていたさくらの落書き、それは「小町部! 体育祭がんばろー!!」と赤と青と緑と金色、紺色にグレー、そして水色と黄色を1色につき1文字ずつ使って書いてあった。
「文字の色がバラバラだけど、何か意味あるの?」
「よくぞ聞いてくれました! これは部員全員と渋谷くんと天宮くんを色で表してみました!!」
誰が何色なのかは明言しなかったが、自分が何色なのかはそれぞれ大体理解できていた。今回は共に走れない二人も常に仲間であると考えていることや、対戦中に彼女の声援が真っ先に聞こえた智彦は、小町部は「わけわかんない部活」ではなく「常に誰かを想って活動している部活」と考えを改め、助っ人に選ばれたからにはその役目を果たす義務が生じたと使命感が生まれていた。
「(小町部、おもしれーじゃん。よし、俺ができることをやってやるか)」
しかし、かりんは清々しさと熱意に満ちた表情をしていた智彦の横顔を見てそれとは対照的な得体の知れない胸騒ぎを感じていた。だが、彼の表情を見て水を差してしまうのではないかと感じたうえにそれを確証づけるものが彼女にはなかったため彼には言い出せずにいた。
「(天宮くんが最後に試合やった相手、うちの制服着てたし、あの顔どこかで……。うーん、思い出せない……)」
おもしれー女ならぬおもしれー部活。基本的に主人公の在籍するとこはそうですよね。
ピーター・ヤングの由来は彼の名前の元ネタの種類です。わかるかなー?




