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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第拾参幕「暗躍」
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第拾参幕の漆

高校生がゲーセンで遊んでるけど、格ゲーで遊んでたら研究者に声をかけられるなんてことはありません。

 数多くの種類のゲームの音声で聖徳太子でもすべて聞き分けられるか不安になるほどの密度の音が流れ続ける店内に入るや否や、かんなが誠治の肩を叩き耳打ちする。

「あれやるんでしょ? あおいっちにいいとこ見せられるんじゃない?」

 普段関わらないタイプの女子に顔を近づけられ、意中の相手がいるにもかかわらず誠治の心拍数は上がる。

「よし、やっちゃるぜ! こう見えてリズム感はいい方なんだ!」

 筐体にコインを入れ、パッドの上に立つ誠治。

「難易度か……このくらいで、曲はこれにしよっと」

 難易度と曲を選び、ゲームがスタートする。和楽器がふんだんに使われた雅な雰囲気を醸し出しながらもEDMが軽やかさを演出している楽曲のリズムに乗って足を上下左右に正確に出してステップを踏んでいく。

 パーフェクトを成し遂げ、誠治は思わず拳を握り締める。

「水崎さん! 見てた!?」

 そう言いながら誠治は振り返ったが、彼のプレイを見ていた者は……誰もいなかった。彼のプレイは高難易度であれば喝采ものであったが、普通の難易度だったためそこまで大騒ぎされるものではなかったのだ。

 拍子抜けする誠治は、近くで人だかりができていてそこから声援が聞こえてくるのに気づく。何が起こっているのか知るために声援のする方に向かうと、途中で悔しそうな表情を浮かべた青年とすれ違う。彼に何があったのか聞くと、誠治が着ている制服を見てから口を開く。

「その制服……! 君と同じ学校の子がストレートファイターで無双してるよ、しかも二人も!」

 話を聞いて誠治はストレートファイターの筐体がどこにあるか青年に教えてもらい、向かうとそこでは2対の筐体にかりんと智彦が隣り合わせに座り、慣れたコマンド入力さばきで次々と向かい側に座っているプレイヤーが操作するキャラクターを倒していたのである。人波をかき分けてなんとかさくらの姿が見えたためそこまで向かい、彼女に事情を聞く。

「火宮さん、これどうなってんの!?」

「渋谷くん! いやー、かりんちゃんと天宮くんが対決したらお互い譲らずになっちゃって……次の挑戦者さんどうぞー!」

「よろしくお願いします」

 一部始終を見ていたさくらの話によれば、かりんVS智彦の熱い勝負を見たギャラリーの腕自慢たちが二人に挑戦したいと口々に言い出し、ならばそれぞれが挑戦者を同時に迎え撃つスタイルにしようとのことだ。

「おーっと、ここで木谷選手のシャルドネが華麗な足技を正確に繰り出すー! 天宮選手の赤嶺も確実に攻撃を避けて……からの重い一撃を食らわせたー! どうでしょう、解説の水崎さん!」

 完全に実況アナウンサーになりきっているかんながあおいを解説者にして話を振る。

「素人の目から見ても、二人ともキャラクターの特性を完全につかみ切ってる。かりんは手数で勝負して相手に攻撃させる隙を与えず防御の薄さをカバー、天宮くんはバランスの取れたキャラ。相手の動きをしっかり読んで対応しつつパワーのある一撃を当ててる」

「二人ともガチじゃん……。俺ちょっとだけやったことあるけど登龍拳すら出せなかったから絶対勝てねえわ……」

 門外漢ではあるが蓮が友人と家庭用のストレートファイターをプレイしていたのを見たことがあったあおいは、持ち前の観察眼と頭脳であおいは二人のプレイを分析していた。

 かりんが使う女性格闘家のキャラクター「シャルドネ」は振袖小町としての彼女を連想させるスピードを生かしたヒットアンドアウェイ戦法で相手をいなしていた。

 智彦が使う筋骨隆々の武道家で、作品の顔ともいえるキャラクター「赤嶺あかみね」はバランスが取れていて初心者から上級者まで愛用者の多いキャラクター。智彦は彼を相手の出方を見てから攻撃を繰り出すバトルスタイルで勝利を重ねた。

 対戦相手は両者とも二人が繰り出す隙のない攻撃に防戦一方となり、いずれも敗北を喫してきた。ちなみに蓮は目からビームを放つ、伸縮自在の手足からパンチやキックを放つなど人間離れした攻撃を繰り出すヨガの達人「シャスラ」をよく使用していたそうだ。

「YOU WIN!」という音声が2つの筐体から同時に発せられ、ギャラリーから歓声が上がる。対戦相手はかりんと智彦に礼を言い、席を後にする。

「これで二人とも9連勝だ!」

「ここの新チャンピオンが誕生だな!」

 この店では対人戦で10連勝すると、チャンピオンに認定され記念品として認定証とメダルがもらえる制度があった。だが、ギャラリーの期待の声に反し、かりんは席を立つ。

「このままノーコンティニューでクリアできるけど、私はチャンピオンなんて柄じゃないから天宮くんに譲るねー」

 期待の声が落胆のそれに変わろうとしていたが、智彦は席を立とうとはしなかった。そのとき、彼の向かい側の筐体に無言でコインが入れられる音がした。

「あれ? 相手の人智彦くんに挨拶してないけど、いいの?」

「オフラインでこれは良くないね、ほら」

 傍観者としてさくらたちのもとに戻ってきたかりんが言うように、ここまでの白熱した戦いに場が盛り上がっていることなどガン無視で席に着く対戦相手の行動に、ギャラリーは怪訝の目を向けていた。相手側のキャラクター選択が済み、智彦と新たな対戦相手の対決の火ぶたが切って落とされた。

誠治は空回りしてるけどストレートファイターで白熱、かりん守備範囲広いねぇ。

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