第拾参幕の壱
体育祭の季節、その前に立ちはだかるひとつの戦い。
ゴールデンウィークも終わり、だんだんと初夏の温かさを感じるようになってきた週明け。それは、小町部にとって一つの戦いのゴングでもあった。
留守番要員であるかんなと、これから起こる一件の重要人物となることがこの時点でほぼ約束されている蓮とアイリスを除く小町部の一同は今、体育館に来ていた。そしてそこには、小町部以外にも彩羽高校の文化部すべての代表者、体育祭実行委員会一同、行く末を見守るために来ていた一般生徒、そして今回の司会としてくるみが揃っていた。
「ねえ、本当に大丈夫なの……?」
不安そうにしているさくらに対し、あおいとかりんは全くそんなそぶりは見せず、むしろ強気であるといった方が適切なほどだった。
「私は蓮とは生まれる前から一緒だから絶対いける!」
「交渉権は小町部が引く。私の占いは当たる」
クールな顔をしているあおいではあったが、たくさんのライバルを前に心の中では熱く闘志を燃やしていた。
そもそも彼女たちはなぜこうして集まっているのか。それは、ゴールデンウィーク前にこのような通達が体育祭実行委員会から部長であるさくらに届いたことから始まった。さっそくさくらは部室に戻り、集まっていた部員たちに情報共有を始める。
「……部活対抗リレーに関して、だって」
部活対抗リレー。彩羽高校の体育祭では、部活対抗リレーで優勝した部員が所属するクラスに得点が大量に入るため他とは違いこれだけはただの一種目としてではない扱いをされるのだ。
「そっか、助っ人制度か」
部活対抗リレーでは、文化部は他の部活が選手としてエントリーしなかった、もしくは部活に所属していない生徒を助っ人として1人指名することができる制度があり、さくらが体育祭実行委員会から渡されたプリントはその選考会に参加するかの出欠届を兼ねていたのだ。
「去年は先輩たちそっちのけで競合されちゃったけど、今年は小町部で頑張るからな!」
「私も去年は是非うちにっていろんな部活から言われたけど、まだ膝が本調子じゃなかったから辞退したんだよね……。でも、今年はみんなと走るよ!」
助っ人として参加してほしい生徒が複数の部活で重複した場合、選考会で抽選を行い勝った部活が交渉権を獲得できるのだ。蓮は「彗星のごとく現れたスーパー1年生」として昨年4つの部活から指名されたほか、アイリスは事前に辞退する届を出すまでは中学時代の栄光を聞きつけた部活が怪我のことを知らずにオファーし、しかもそれが殺到していたのである。運動部にとっての最強助っ人や元未来のなでしこジャパンにとっては、その身体能力も時には悩みの種となるのである。
「じゃあランナーは蓮とアイリスちゃんはとりあえず決まり……」
さくらが正規部員のランナーを決めようとしたところに、隣から手が伸びあおいがプリントを取っていき、部活対抗リレーの助っ人制度についての注意点を注視した。
「……さくら、ちゃんと注意点読んだ?」
「ざっとなら……」
あおいはやれやれと言わんばかりに小町部にとって不利になる助っ人制度の点を説明していく。
「まず、助っ人にできる生徒は他の部活の選手及び補欠、それと体育祭が行われる年度の4月1日時点で部活に入っていない生徒全員、そして運動部所属だけど助っ人に志願した生徒。この部ができたのはまだ1か月ちょっと前。これがどういう意味か分かる?」
「……りんりん以外みんな助っ人にされちゃう可能性がワンチャン……」
かんなの言う通り、小町部の部員はかりんが家庭科部に入っていた以外はいわゆる帰宅部だったのだ。
「でもうちの部員は6人、必要な選手はランナーが4人で補欠が2人だから大丈夫なんじゃ……」
「そこは生徒会として私から実行委員会に聞いてみる」
そういって善は急げとアイリスは体育祭実行委員会に話を聞くべく部室を出た。
「それに蓮とアイリスは去年1年だったのにランナーに欲しいと言ってきた部活がいっぱいあった。だから私たちと一緒に走れる保証は……はっきり言ってない」
うちの高校は大縄にだけ力入れて毎日練習させられたのに他は全部当日ぶっつけ本番の不可解な体育祭でした。




