台所
お屋敷の一階、ソルラが壊した階段の裏手には大きな食事場に続く扉があります。
「お姉ちゃん、すごいね!私達のおうちよりものすごく広いよ!!!!」
とソルラははしゃぎますが、正直広すぎます。
真っ白な石……でしょうか、長方形に伸びたテーブルに椅子が8つ。モンシンさん、なかなかの大家族だったと思われます。あるいは子沢山だったか。なかなか旺盛な方ですね。
食事場の横には、料理場に続く扉がありました。
「この物置もすごいね!ご飯がいっぱい入ってるし、中からすごく冷たい空気が流れてくる!魔法かな!?」
電力ですね。
ソルラの覗く冷蔵庫の中には、お野菜やお肉、お魚など、たくさんの食料が入っていました。これならそれなりの期間、しのぐ事が出来そうですね。
我が家の料理事情ときたら、それはもう酷いものでした。
お父様はせっかく貰ってきたお給料をだいたいワイバーンレースやゴブリン徒競走、オークvs魔法女騎士10番勝負(最近では人間界の慣習が流れてきて、相撲とか取るそうです。訳がわからないですね)などに全額使ってしまうので、
・スライムの缶詰(そのまま缶の中にスライムが入っています。調味料を入れて混ぜ、パンに塗って食べると美味しいのです。ただし舌触りはびっくりするくらいヌルヌルします)
・タルシュトロムの中落ち(タルシュトロムという黒い触覚の生えた昆虫を人工的に太らせ、肥えた腹肉を切り取ったものです。美味といえば美味なのですが、カサカサと動き回る姿が不気味という事であまり、というか全く人気がなく安価で手に入ります。味はちょっと生臭い脂の味がします)
・ラグーンフィッシュの鱗の焼いたもの(口の中で鱗が破裂します。とても痛いです。歯ごたえがあるとかそういう問題じゃないです。でも骨を伸ばしてくれるらしく、口の中を血まみれにしながら必死に食べていました)
などの安いものを食べていました。おかしいですね、有名な外交官でそれなりのお給料を貰っていたはずなのですが。子供の頃はあまり疑問に思いませんでしたが、今になってとても疑問になってきました。
それはさておき。
「ソルラ、何か私が料理しましょうか」
「んー。お姉ちゃんの料理も食べたいけど、私あれが食べてみたい!」
ソルラは棚から何かを引っ張り出すと、私に見せます。
「カップヌードル……」
「これ!お父様がおいしいらしいって言ってた!お姉ちゃん作って!」
ソルラは私の手に、カップヌードルを持たせます。
さて、困りました。
お肉やお魚であればこちらも向こうもあまり関係ありませんから、焼けば食べれるでしょう、くらいの考えでいたのですが。
カップヌードル、というのは初耳です。蓋を開けても、固まった何かが入っているだけです。
さて。
私はどうやって、これを料理すればいいのでしょうか?