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閑話2 赤い悪魔

ちょっと短めです、バイトから帰って書いているので許してくらさい。

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「な、棗君……こ、このお店ヤッパリ何か可怪しい気がするんだよ」


「先輩らしくないなあ、周りの人に迷惑だから余り変なこと言わないでくださいね!」


 僕等の周りには顔を赤くして大量に発汗する人達が無心に麺を啜る音が聞こえる。誰一人言葉は発しておらず、皆ものすごい集中力で麺をすすっている。嗚呼、どれほど美味しいのだろう? ここのご飯は……。


「ほら、見てよ葵先輩。皆夢中で食べてるよ、それだけここの料理が美味しいって事なんだよ。それにさっきも言ったけど、辛さは選べるからね、早く注文しよう?」


「……あー、棗君、そのことについて少し疑問があってね。私がまだ正気なら、選べる辛さの一番下が”激辛”ってなっている様に見えるんだけど?」


「そうだね、どうやら辛さは激辛から上を選ぶ方式みたいだね。マスター、僕はこの”煉獄担々麺”辛さ”溶岩”麺硬めで!」


「溶岩って辛さの単位なのかい!?」


 珍しく先輩に落ち着きが無いな。お腹が減って気が立っているのかな? まぁご飯食べたらきっといつもの先輩になるよね。結局先輩は”まったり白湯ラーメン”辛さ”激辛”にしたらしい。折角選べるのに一番下を選ぶなんて、先輩にしては随分と大人しい事をするもんだ。




 ―――― Side 葵




 可怪しい……今日、私は楽しい棗きゅんとのデートを楽しんでいたはず……。


 いや、事実、私の眼の前にはニコニコと可愛らしい微笑みを浮かべた棗きゅんがいる。だけど、これは、この店はどうなっているんだ? 棗君はここの連中が、あまりに美味しいご飯を食べているから集中していると言っていたけど、私にはとてもそうは思えない。だって、ここのご飯というか激辛ラーメンを食べている彼等の目は、明らかに常軌を逸しているから……


 虚ろな表情で無心に麺をすする彼等、何が彼等をそうさせているのか、原因は一目瞭然だ。 


 それにこのメニュー……赤い、圧倒的に赤い。まず紙が赤い。文字も”辛”とか”赤”が多すぎる。掲載されているイラストも、全部赤い。何なら店内の調度品や壁紙もすべてが赤い。これは最早何かの呪いとかなのではなかろうか?


 ちらりと見ると、棗君は既に注文を決めたようで、私の方をニコニコと見つめている。く、可愛い……何時もはゴミや虫を見る様な目で私を見てくる棗君が、今日は満面の笑顔で見つめてくれる。しかし、可愛いけれど今はそれどころではない。この注文一つで、私の何かが決まってしまう、そんな予感がするんだ。まだ食べてもいないのに、私の頬を一筋の汗が流れ落ちていく。


「ま、まず、料理は一番マイルドそうな、この白湯ラーメンにしよう。辛さは……なんだこれは」


 思わずメニューを落としそうになってしまった。


 ”激辛” ”超激辛” ”超超激辛”ここまでは判る ”豪炎” ”溶岩” ここで溶岩、棗くんの溶岩がきました。ここまではまあ、なんとか理解できる、いや、ヤッパリ難しい? 続けて……


 ”龍息” ”神域” ”虚無”


 この辺りに来ると最早辛いのか何なのか判らない。”龍息”はドラゴンブレス? 度合いが全くわからないぞ。そして最後に一番謎なのが……”甘”

 普通に考えるのであれば、これは甘口なのだろうけど、書いてある場所は”虚無”の上。そも、”虚無”にしても辛いのか何なのか……ここは”甘”にするべきか? いや、しかし、ここでの選択ミスは命にかかわると、勇者の勘が告げている。


 ここは冒険をするべき場面ではない。虚無や甘等の得体の知れない者に挑戦する場面ではない……ここは、少なくとも私の知っている言葉から選ぶとしよう。


「わ、私はま、”まったり白湯ラーメン”辛さ”激辛”で……」


 えーい、儘よ! 激辛くらいなら耐えてみせる、耐えきってみせるとも!!


 暫くして運ばれてきた真っ赤(・・・)なラーメン、”白”湯ってなんなんだろうね……ふふふ。


 眼の前には溶岩をハフハフいいながらすする可愛い棗きゅんの姿が。棗きゅん、今日はお姉ちゃん、ちょっとだけ棗きゅんがわからなくなっちゃったな、うふふ。


 もういっその事、こっそり逃げてしまうわけには行かないだろうか?


「からーい、でもおいしーい!先輩も早く食べましょう? 美味しいですよ!」


 ……南無三、逃げ道はなさそうだ。こうなりゃ私も女! 女は度胸!! いっちょ行ってやりますとも、棗きゅん、私に力を与え給え……。



 ………… 閑話休題(何とか食べきった)



「先輩……辛いの苦手ならそう言ってくださいよぉ」


「いやぁ、苦手というわけではなかったのだけどね?」


 驚いた。一口食べた瞬間頭の中が真っ白になってしまった。完食はしたものの意識を失ってしまった私を、棗君が介抱してくれていたらしい。ふと、私の脳裏にあそこの客達の顔が浮かぶ。あれは、集中していたんじゃない、今の私には解る、解ってしまう、なぜならきっと私もああいう顔をして食べていたから。


「すごく美味しかったですねー、僕またここでご飯食べたいな」


 はわぁ~、可愛い。何も知らなければハグしてキスして、その後指でクチュクチュ(?)しながらベロを吸い上げたいゲフンゲフン、乙女が考えてはいけない所で突っ走るところだった……。兎に角、あの食事を笑顔で堪能できる棗くんに、今は少し戦慄を覚える。


 今の棗くんにキスしたら、私の舌はとろけてしまうのではなかろうか? 物理的に……


「あ、あぁ、そうだね、今度は是非、ヒデも連れてこよう……」


「ッ! そうですね。はい、是非!」


 あぁ、眩しい笑顔だ、この笑顔は裏切れない。だが、すまないヒデ。お姉ちゃんは味方もなく、あのラーメン(赤い悪魔)にリベンジする勇気がないんだ。君を巻き込んでしまった事は遺憾に思っているとも。だから、お姉ちゃんと一緒に地獄に落ちておくれ。


「さて、ちょっとしたアクシデントがあったけど、そろそろ本命のショッピングに行くとしよう」


 とんでもないハプニングはあったけど、ここからは私のターンだ。棗君覚悟をしてもらおうか。


「はーい、そういえば今日は何を買うんですか?」


「んふふ、言ってなかったかい?それはもちろん、君の下着だよ!」


「……はい!?」


 さあ、お楽しみはここからだよ?

棗きゅんの運命や如何に。

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