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CROSS ROAD   作者: ヒカリ
3/3

全てがきらめいて見えた

3回目にして主人公の名前と塾の名前を初めて書きました


「ねーえ、なおさん、これ分かんない!」

「ダーメ。自分で考えて。」

「むりむりむり!!俺みたいなのがこんなとこ自力でやってたら日が暮れるって!」

「もう暮れてるわっ!」

「あ、そっか。って、でもぉー、ぜってぇーとけねーよ??」


すっかりおなじみとなったこの会話。

私の向こう側に座っているのは運動会に誘ってくれた“あの子”である。

でももうあの子じゃない。

いしいともなりって名前で、小3で、サッカーやってて…。

あの日を境に友成とはすっかり仲良くなって、いろんなことを知れた。

そして友成も…。

「なーおーさーんー!きいてんのー!!?」

私のことをさん付けで呼ぶ。(ちょっと恥ずかしい笑)

彼もまた、私が但木菜緒っていう名前だってこと、高1で、隣の市に住んでること、いろんなことを知っている。

毎回、毎回、友成は塾に来ると、宿題を私の所に、お直しを私の所に、今日の分を私の所に。

そして直しがわかんない時の八つ当たりまで私の所にきっちりとやってくる。


その度に私たちはいろんな話をするんだ。

恋の話(私)、サッカーの話(友成)、

…それから他愛もないバカっぽい話(両方)。


私が、好きな子の話を一生懸命にすると、友成はいつも唇を片方だけ上げてこう聞く。

「そいつより、俺の方がよっぽどサッカー上手いよ。俺とどっちが格好いい?」

正直、深く考えれば答えは決まってる。

けど認められなくて、うまく笑えないままに「そう言う問題じゃないでしょ」って誤魔化してしまう。

自分の気持ちに見て見ぬふりをするのは辛いことだ。

そう、本当に。


友成のサッカーの話はいつも同じ結論で終わる。

「だから、俺が市の3年で1番上手いんだぜ。」

単なる豪語なのか、それとも本当なのか。

「いつか見に行ってあげたいよ。」

いつの日か、そう呟いてから友成は毎回のように週末の試合の場所を伝えるようになった。

でもまあ、行ったことないけど。

今考えてみれば、行ってあげればよかったなぁーって思ったり、思わなかったり。


そして最後の他愛もない話。

これが1番楽しいし、私たちって気があうんだなぁってつくづく感じる瞬間でもあった。

それはごく自然な話で、もう今具体例なんて聞かれてもうまく言えない。

でも学校で怒られた話とか、クラスの女子がブスだって話とか、高校生男子は気分屋だってこととか。

総合的に友成と話すのは異常なくらい楽しかった。


けど。

7月上旬、スタッフの目が怖くて仕方なかった。

だって、うちの母親にもしこんな気持ちバレたら…。

うちの母親のねちっこさと言ったらそりゃもう、ない。

本当にない。

こんな高1が小3にお熱あげてるなんてバカみたいなこと言われたら、私もう家族という社会の中で生きていけません。

だから楽しいって思えば思うほど心にブレーキがかかって、わざと冷たい態度とったり、先帰ったりできたんだ。


8月上旬。

悲しいことに私の頭は、パッパラパーになっちゃったみたいで、あまり人の目とか気にしなくなった。

2人で示し合わせては帰るタイミングを合わせて見たりもした。

友成の家は未来塾から少し離れた場所にあって、お母さんが迎えに来るまでに時間がかかる。その間、教室前の踊り場で2人で膝を抱えて話すんだ。

家族の話もした。

クラスと先生の話もした。

好きな食べ物の話、今まで行った場所で1番楽しかった場所。

教室の中では勉強の合間にしかできなかった話が好きなだけできて、好きなだけ笑える。

7歳も歳が離れてるはずなのに、友成の話す話は決して浅い内容ではなかった。

バカな話をしているときは本当に幼くて小学3年生らしいのに、時々見せる真剣な顔には、ハッとさせられる。

あの顔は大人の表情だ。

それが、嬉しかったり、ちょっと怖かったり。

それでも、何度も何度も、私たちは踊り場で話をした。



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