収穫祭の魔王
「シュロ、そんなモノを出されてもだな」
ブラドは少し困った顔をして、シュロを見て、先ほどのシュロから手渡された紙を見せて聞いてくる。
「大体、これは何だ?」
「有給届けです」
「だから、それは何だと聞いているんだ?」
「労働者の休暇日のうち、雇用主から賃金が支払われる有給の休暇日ですよ」
「意味は聞いてない。
大体、こんなモノを用意しなくても、お前は店主なんだから、本日休みと看板を出せばいいだろう」
「いえ、私も、雇われている身ですからこんなのを用意したのですが…」
「そうだな、セリカ様に理由を説明すれば休暇くらい設けてくれるだろう」
だが、シュロは、その届け出をしまう事はなく。
「なんだ、俺がセリカ様に直接渡してほしいと?」
「お願いしたいのですが…?」
「じゃあ、理由くらい教えてほしいものだ」
そして、黙るシュロ。
「そもそもだ、シュロよ。
今のお前の口ぶりから察するが、お前の今の理由は『休みたいから休む』だ。
お前の勤務態度は、真面目だ。
別に、この休暇のとり方も、構わん。
だがな、俺が直接、この届け出をセリカ様に渡しそうとしよう。
だが相手は魔王だぞ、それで納得すると思うか?」
するとシュロは、ブラドをじっと見て、
「無理そうですね…」
その返答に、ヴァンパイアは拳を振り上げて、殴り掛かるマネをする。
「だろう、吹っ飛ぶの目に見えている結果だ。
セリカ様はそろそろ来る頃だし、直接、話せば良いだろう?」
「それが出来ないから言っているのですよ」
ブラドは再度、不振そうに眉間を寄せ。
「どうして?」
またもや黙り込むシュロ、
「……」
ダロタも心配そうに様子を伺っていた。
その日は、不幸か幸いか、セリカはやって来るのが少し遅かった。
「とにかく来週、休ませてもらいますよ?」
おかげでシュロは、さっさと帰る。
「あら、シュロ…」
セリカとすれ違い気味に、
「最近、シュロって、さっさと帰るわよね?」
「はあ、そうですね?」
理由はわからぬまま、従兄は従妹に先ほどの届け出を見せる事になった。
セリカは疑問には思いもしたが、
「シュロ!!」
ドカンとドアが壊れるのではないのかという勢いで、陽気にカイリが入ってきた。
「なあなあ、お前んトコロで、収穫祭があるって…あれ、いねえのか?」
面白キーワードを胸に秘めて…。