イインチョ、シュロの弱点を付く その2
「いらっしゃいませ~」
シュロはいつもどおりにモンスターに接客をする。
「今日は何にしますか?」
「ああ、ウチの魔王様が落とし穴が足らなくなったから、落とし穴のワナを20ほどほしいんだけどな…」
ちなみに相手はアークデーモンという上級種のモンスターである。
本来なら人間相手に遠慮するモンスターではないのだが、シュロがこの店の主であるからか、力量を見計らわれているのだろうかわからないが、シュロは平然と答える。
「ありますよ」
「ホントか?」
「作りおきする事しか、この店の売り物はありませんからね。
どうせ、もう店じまいですし、全部持って行って良いですよ」
「いや、数を合わせるだけで上等だ」
「ですが品質は保証できないというのは、知ってますよね?」」
「構わん、構わん」
思っても見ない待遇だったのか、このアークデーモンは喜ぶので、
「じゃあ、さっそく用意します」
シュロもワナの入った箱を探していると…。
「おう、二番目の…そこだ…」
上機嫌なアークデーモンは、親切に指を指していた。
……。
「便利な能力ですね」
そんなイインチョの淡々とした呟きが示すように、シュロの記憶をセリカの魔力によって映し出された映像を見ていた。
「ホントだ。
シュロ、お前、字を読んでないな?」
「シュロ、どうしてこんな大事な事を先に言わないの?」
「字を覚えようと努力はしているのですが…」
そう言って、セリカを見る。
「……」
「何よ?」
この無言、先に察したのはカイリだったらしく、ゲラゲラと笑い出した。
「原因は私だって言いたいの?」
そして魔力を高め出し店内を揺らしなさる魔王、だったのだが…。
「原因はセリカ様とカイリ様にあるでしょうね」
イインチョの出した答えに、セリカは近くにあったモノを握りつぶし、おそらく全力で投げ付けた。
キラン!!
しかし、イインチョは輝きを放ち、それを弾く。
「おうっ!!」
そして、二階に避難しようとしたブラドを打ち落とす。
その様を輝きの届かない位置にいた、シュロとカイリは思わず。
「い、今、デコで…」
「は、跳ね返してたな…」
顔を見合わせていたのだが、
「そんな事より!!」
で済ませてしまうセリカは、説明を求めていた。
「セリカさん、何件壊したと思います?」
「何よ?」
「この店、何件目だと思ってます?」
「そんな事は知らないわよ」
「まあそれだけの数を壊してきたというワケですね」
再度、イインチョの言う事に魔力を高め、イインチョは対抗しようとしているのか…。
前屈みに俯く。
「やっぱデコなのか?」
「カイリさん、今回は完全に傍観者ですね」