イインチョ、シュロの弱点を付く
「…ッ!!」
それはまるで深呼吸のように見え。
「~~!!」
ブラドがさっきから苦しそうに、顔をしかめているが実際は違う。
今、発している『!!』の部分は『♪』なのだけはわかるのだが、聞かずにはいられない。
「何やってるのですか、ブラドさん?」
イヤホンを外してようやく気がついたブラドは、口をあんぐりと開けるダロタと共に呆れていた自分に言う。
「エアカラオケだ」
「えあからおけ?」
「地上では、エアギターで世界大会が開かれるほどなら、コレも流行るんじゃないかと思ってな」
「流行りますかね?」
「シュロよ、馬鹿には出来ないぞ。
言葉、音楽にとって大事なのは、感情を込める事にあるんだ。
エアギターに然り、大事なのは『ノリ』なのは変わりはない。
意外と異性の歌を歌う時、誰かがやってる行為だと思うが…」
『やっぱ、流行らんか?』と言いながら、感情を込め歌い(?)初める様、
「この吸血鬼は何をクネクネやっているのですか??」
このイインチョの感想は、間違っていない。
「これはみなさましばらくです」
相も変わらずメガネ、ではなくデコを光らせてる彼女を、シュロは不機嫌そうに見るので、いつの間にやら。
「あら、珍しいわね。
シュロが人を毛嫌いするなんて…」
「ああ、珍しいモノもあるもんだ」
魔王二人が、冷やかしに掛かる。
「理由は解らないでもありませんがあからさまに人を悪者と扱われたくはありまはせんね 」
「今度は、何を審査しに来たのですか?」
「いえいえ今回は何も評価を下すために来たのではありません」
そう言って、イインチョの来た理由は、自分の店の評価を上げる為でもあるのだと言って、本を一冊、取り出した。
「何だコレ、絵本?」
カイリの『絵本』という単語が聞こえ、嫌な予感がしたがイインチョは言う。
「シュロ様読めますか?」
「おいおい、シュロを馬鹿にするなよ」
カイリは笑いながら、自分に促すが、
「……」
黙り込む人間が、ここに一人。
「お、おい、まさか…」
人間、こういう事を暴露されるのは物凄く嫌なモノである。
「どうして星2つなのかここにも理由があるのですよ」
さすがに驚きを隠せないのは、カイリだけでなく、
「シュロ、ホント?」
セリカも驚いていた。
「今まで、どうやって商売していたんだよ?」
「別に文字が読めなくても、商売は『こそあど言葉』で今までやっていけましたからね」
「でも、この『ゾンビお断り』の看板、読めてたじゃない?」
そう言って、セリカは前回の看板を指を差すが、これにはタネがある。
「あれも『こそあど言葉』の効果ですよ。
ブラドさんが、この看板を作って、
『これがゾンビお断りの看板だ』って感じで教えてもらったから、読めるわけでして…」
よほど信じられないのか、魔王二人の押し黙る風景がここにあった。