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第七話 その3

これから、この話は一話完結型にしたいと思います。

 「なるほど、じゃあ、お前は病弱な母さんと自分の学費を稼ぐ為に働いているのか…。」

 事情を告げてカイリの方を見ると、カイリは目を輝かせていた。


 「えらいっ!!

 良い話じゃないか、やっぱりお前、気に入ったよ。

 じゃあ、それならさ、オレのトコロで働かないか?」


 「はい?」


 あまりにも突然の事なので、頭が普段どおりに働いてくれなかった。

 だが、カイリは構わず、どうしてか話を進めた。


 「いや〜、オレのトコロもさ、いよいよ政治に力を入れようと思ってんだ。

 聞く所によると人間の施設って、娯楽もあるんだろ?

 それでそれを少しばかり教えて欲しいと思ってな。

 セリカのトコに人間のワナ作りの店主がいるって、話を聞いて事で引き抜きに来たのさ。

 で、セリカの方はオレのトコにいた。

 ワナ作りの職人をよこすから、どうだコッチに来ないか?」


 「ちょっと、何を勝手な事を言ってんのよ。」


 セリカは自分の手にしていた商品を『ぐしゃり』と握りつぶしながら、立ち上がってカイリを睨みつけた。


 間違いない、経験者は理解する。


 …いらつきなさってる。

 

 だが、いらつく度に何かを握り潰すクセは治した方が良いと思った。

 せっかく作った商品が台無しだ。


 しかし、カイリはさすがに魔王なのか、そんなお怒りのセリカを物ともせずこう言った。


 「何でだよ。減るもんじゃないだろう。

 お前にオレの国からコイツより良い腕の職人の店主を寄こす。

 オレはコイツの悪い腕を目を瞑って、人間の世界の政治の話を聞く。

 こういうのを何て言うんだっけ?」


 「適材適所だべか?」

 何でそんな言葉を知っている。このオークは?


 「ま、まあ、シュロ、悪い話じゃないとコッチは思うんだ。お前はどうする?」


 何かややこしい話になりそうだったので、自分で言えることは当然、一つだ。


 「いい話かもしれないけど、お断りします。」


 「ああ、そうかい、なら仕方ねえな。コッチも諦めるしかねえな。」


 セリカは『当然ね』と言った表情で、カイリに見ていたが、この魔王の潔さは、自分にとっては心地よさを感じたので失礼の無いように取り繕う。

 

 「すいませんね。ですけど、自分の知っている程度なら、休憩時間以内なら相談に乗っていいですよ?」


 これくらいの譲歩はしてあげた。


 「甘いわね。」

 セリカは呆れてそんな事を言ってきたが、こういう人間、もとい魔王だが、こんな性格の持ち主とは、仲良くしておいて損はないだろうと思ったからだ。


 「いいのか?」

 「はい、こっちも、これから何か相談事があったら、遠慮なくカイリに聞いても良いですかね?」

 

 「ああ、オレの答えられる範囲ならな。

 こっちもそれ以外でも聞きたいことがあったら聞いても良いかな?」


 カイリは機嫌よく手を差し出したので、その握手に答える。


 「ええ、男同士ですから、気兼ねなくどうぞ。」

 「んっ、ちょっと待て、お前…、今何て言った?」


 和やかな空気が一瞬にして凍りつく、見ると二匹の魔物は『何か』に凍り付いていた。

 何かおかしい事を言ったのだろうか的な視線を二匹に送る。


 『アカン、アカン。』

 

 するとそれを言わんばかりに、二匹は首を横に振っていた。

 向き直るとカイリは下を向いたままだ。


 「なあ、シュロ、お前に一つ聞いておくが、お前から見てオレは、どう見える?」

 

 …何だろう、この選択間違えたら、『殺りますよ』ってオーラ。


 何ともいえない緊迫した空気の中、とりあえず握手から離れる。


 そして、俯いたままのカイリを上から下へ、下から上へ、見やり自分なりに想定できる解答を模索してみると一つの答えが浮かったところで、『ある物』が目に映った。


 ある物とは、カイリの履いていた履物であり、それは少しヒールが高かった。


 まるで女物の様に…。


 「もしかして…。」

 「『もしかして…』じゃねえ…、オレは、オレは…ッ!!!!!」


 「女だー!!!」


 一瞬の閃光


 2回に渡りギリギリの綱渡りで守られていた家屋。

 だが、その時、とうとう3回目で家屋が崩壊したのだった。



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