シュロの店の星の数 その1
「いやあ、まさか噂の人間の店がここにオープンするとはねえ」
「あ、はは…」
客である、二足歩行するトカゲに見下ろされ、顔が少し引きつるが客商売に客は選べない。
彼等だって…。
「まあ、ただがワナが、こんな安値で、買えるのは、ありがてえな」
「まったくだ、近くの、ワナ職人のヤツら、こんなんで、高価で売ってやがんだから、こっちの、財布の事を考えやがれってなっ」
ちなみに『、』の辺りで『ちゅるり』と、リザードの舌が出ているが、モンスターでもやはり常識を踏まえている。
「今後、厄介にさせてもらうぜ?」
「そういや、お前等の、引越しは、有名だったな、無断でしやがったら、承知しねえぞ?」
一応の脅しを掛けられるが、
「そんなの、コイツの魔王次第だろ?」
明らかに『ダメージ』になる裏拳を、その様子は仲間の顔面に与えて気にするなと言っているように見えた…。
そして、セリカがちょうどの良いタイミングでやって来るのを見て、豪快にゲラゲラと笑って出て行くトカゲ二人を何とも言えない顔で見送っていた。
「会長、ここが噂の人間の店でございます」
そこに見慣れぬ黒頭巾の一団がやって来て、店から出て来たトカゲの目を引いていた。
リーダー格が、フードを取るとメガネを正す。
「噂どおりの繁盛振りですね」
そのメガネが白く…。
「行きましょう」
おデコが光っていた。
「まぶしっ!!」
シュロの目が眩ませ、その挨拶は始まった。
「こんにちはシュロさん貴方の店は転居が多いので探せは出来どもお会いは出来ませんでしたのでご挨拶は初めてですね」
句点のない話し方で、淡々とした一通りの挨拶が終わると、ようやく自分の視力が回復すると、そこには眼鏡を掛けた女の子がシュロを見た。
「おや失礼を」
そして、素早く事情を察した彼女は自己紹介を始めた。
「私は魔界査定委員会のイインチョを申します」
「委員長?」
「いえ『イインチョ』です」
妙な魔界のニュアンスに、困惑するがイインチョは構う事なく言う。
「私達は様々な『組織』を査定するために存在する『組織』です」
するとセリカは『ふ~ん』と頷き、
「でもそんな組織が存在するなんて、聞いた事はないわ」
「それは無理も無いでしょう最近ようやく出来上がった組織ですから」
咳払いするイインチョは説明を始める。
彼女の国を収める魔王、崩御して後継者たる者が見つからなかったので、その国は吸収されたのである。
事の成り行きとしては、簡単な話だが…。
「確か貴女…」
セリカが彼女に何か思い当たる節があったのだろう。
「はい昔カイリ様の即死魔法で死んだ魔王私の父にあたりますそしてどこの世界に即死魔法の効く魔王がいるのかと罵倒され家臣も離れ追い出されたのがその話の実態でございます私も働かなくてはならないのでこの組織を立ち上げたというワケでございます」
淡々と話すので文字書きとして、迷惑極まりない文章を流す事となっていた。
だが、珍しくセリカは考え込む仕草を見せた。
「ご心配無用でございます父とて魔王などやっていればいずれこんな日が来るのを覚悟していた事でしょうしそのつもりも無かったカイリ様を恨む事は致しませんですからカイリ様が考案された組織を立ち上げて答えたしだいなのです」