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復帰第一戦目のぶち壊し 完結編

 『こっち見んな』とばかりにカイリは、先ほどのフロアにあった小石を持ってきて『スコンッ』とブラドにぶつけた。


 それが…。


 「あっ、カイリさんですね」


 「んだ」


 決定打だった。


 何も無い天井を、オークと人間がじっと見ていると。


 「ああ、テス、テス。


 おい、お前等、どうして見えるんだ?」


 カイリの声が先ほどの石から反響して聞こえてきた。


 「見えてませんがなんとなくですね。


 解るんですよ。


 いるのなら、さっさと出てきてくださいよ」


 「いや〜、たまにはさ。


 ダンジョン探索しているシュロを見てみたくてさ」


 「だったら、攻撃はしないでください。


 酷いじゃないですか、ブラドさんダメージがとんでもない事になってますよ?」


 「しょうがないだろう。


 魔王の攻撃を避ける人間なんて、そうそう見れるモンじゃないし。


 その攻撃を避ける、お前が悪い」


 別の次元にいるらしく、先ほどの石が宙に浮いて、ダロタのヘルメットをブヒブヒと小突く動作が不思議と彼女の動きとダブって見え。


 「おら、さっさとセリカの元に行かないと怒られるぞ?」


 「セリカさん、これもお仕事の一環ですよ?」


 そう言いながら、カイリを表している石とは別方向に首を向けた。


 「だから、なんで私のいる方が見えるのよ?」


 ブラドも立ち上がり同じ様に、自分と同じ方角眺める。


 当然、他のモンスターが『何をやってるんだろ?』と眺め、横切るように何もない。


 しかし長らく魔王を相手にしているからだろうか。


 しばらくは沈黙していると。


 くぃ~。


 セリカが移動しているであろう場所を、二人と一匹が同じ動作で身体が動き。


 くいっ!!


 クルリッと急に身体をまわるのは、瞬間移動をしたのだという事が何となくわかってしまう。


 日頃の成果が、ここに発揮されていた。


 「私のおかげね」


 「セリカ、絶対、良い方に捉えられてないぞ?」


 そしてセリカの『こっちみんな』は、木の矢が放つ事であった。


 「毎度ッ!!」


 そして、それはブラドの眉間に命中する。


 「カイリさん、笑ってる場合じゃありませんよ」


 「だから、何でわかるんだよ?」 


 そして、カイリを指す石がケラケラと笑ってはいるのだが…。


 二人と一匹には、嫌な風が吹き…。


 ふいにブラドが…こう呟いた…。

 

 「気を付けろ、シュロ、俺達が1マス動けば、敵も同じ様に動く。


 俺達は次のフロアに移るまで、安全に移動するのが目的だ。


 敵を倒そうなんて考えるな。


 敵は別の次元にいるのだから、俺達がどうにか出来る相手じゃないんだからな」


 「ブラドさん、ルールを決めて行動すると、セリカさんが便乗するか思って、そんな事を言うのでしょうが…。


 ブラドさん、甘いですよ」


 その時、また、嫌な風が吹いた。


 「あの人達…。


 魔王なんですよ…!!」


 言うが早いか、ダロタを『ぶひっ』抱えて走り出した。


 「ど、どうやって、避けろって言うんだよ!!」


 ブラドの叫びが、フロア中に響き渡る。


 自分も身の危険を感じるが、このフロアを出るまで少し遠かった。 


 不思議のダンジョンでのダメージでは『死ぬ』という事はないのだろうが…。


 やはり怖いものは怖い。


 これが人間の心理である。


 だが…。


 「うわっ!!」


 突然の衝撃波が自分を襲い、逃げる足をすくったらしく。


 ダロタを抱えたまま地面を転がってしまった。


 「だ、大丈夫、ダロタ?」


 そう言いながら、何が起きたのか状況を確認していると…。


 「やっと見つけたぞ…。


 ブラドぉぉ!!」


 自分の身体がすくみ上がるほどの叫びを上げるが、ブラドはようやく立ち上がってくる最中だったので、その怪物は叫ぶ。


 「さあ、このバルバロッサが、雪辱を晴らしに来たぞ」  


 「ああ、お前か、すまんが今日は取り込み中だ」


 「ふん、普段、そういう性格だから、先の戦いは負けたのだ。


 さあ、今度は油断も無い、戦おうぞ」


 バルバロッサと名乗るモンスターが『ぶおっ』と翼を広げると突風が吹き荒む、そして、哀しいかな人間風情…。


 軽々と転がされてしまい。


 壁に激突する。


 「あっ」


 ブラドが自分を見て『大丈夫か?』というがバルバロッサはその様子をみて、


 「人間ごときを構っている暇があるとは随分と余裕だな?」


 と笑っていた。


 だが、ブラドはバツの悪そうな目をしていた、それはまるでバルバロッサを哀れんでいるようにも見え…。


 バルバロッサの背後から、次元が歪んだ。


 「おい、お前、ちょっと来い…」


 カイリの声が聞こえ、そのまま言うなりに、バルバロッサの後ろから伸びる四本の手が見えた。


 「な、何だ。この腕は!?」


 見覚えのある腕が、翼、両腕を羽交い絞めて、どす黒い空間の中へと引きずり込む。


 「アンタ、調子に乗るんじゃないわよ」


 セリカの声が聞こえるが、バルバロッサには何が起きているのか理解する方が先なのだろうが。


 明らかに体格の違うはずの、彼女達の両腕がソレを許さず。


 完全に彼女のいる空間に引き込まれたのか、ブラドは呟いた。


 「その日より、彼の姿を見たものはいないという…」


 「突然、何を言ってるんですか?


 というより、あれ、何ですか?」


 見えない空間が『バキン、バキン!!』と鋭い音を立てている中、自分はそう聞くが、ブラドは自分の肩に埃が付いている事を指摘しながら言う。


 「世の中には知らなくて良い事もあるんだぞ」


 ブラドの言葉は、妙な重さがあった。


 「そ、そうなんですか…。


 ですが、これで何とか無事に帰れそうですね?」


 「そ、そうだな、まあ、お前が『無傷』だというのは幸いだな」


 その次の瞬間だった。


 「そういえば…」


 「そうよね…」


 急にバルバロッサを痛めつける音が止まった。


 しかし、別の次元にいるので、自分は知る由もないのだが…。


 翌週…


 「ねえ、シュロ、どうしたの?」


 セリカといつものように出迎えられていたのだが…。


 嫌な風が吹くたび、


 「ふふ、どうしたの?」


 自分が狙われている錯覚を覚えるようになっていた。


 


 

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