復帰第一戦目のぶち壊し その二
意外と初公開なのではないだろうか、不思議のダンジョンにて落とし穴に落ちてからの、下にいるモンスターを下敷き行為。
そんな考えが浮かぶのは、自分がブラドを下敷きにして気がついたからだった。
『ただいま、工事中』
そんな黄色いヘルメットを被った、ダロタもあんぐりと口を開けて驚く中、ようやくブラドが自分を退かせて聞いてきた。
「シュロ、どうして、空から降ってきた?
落とし穴にしても、お前、見えるだろ?」
「いや、すいません…」
さすがに人一人の落下を腰で受け止めた、ブラドは立てない中、自分は説明すると悪気はないとわかったのだろう。
「まあ、仕方ないな…。
魔界で商売をやってる事がバレても不味いからな」
そう納得して、ようやく立ち上がって言った。
「すぐに店に行くのも構わんが、シュロよ。
少し手伝ってくれんか?」
「どうしたんですか、というより、どうして二人はここに?」
ようやくここで自分は、二人がいることに違和感を覚えた。
「手の使えないヤツの代わりにワナを設置しててな」
「そういえば、新しい商売を始めたと言ってましたね?」
「今月も財布の中身が危ないのでな、まあ、バイトだ、バイト」
なるほどと頷けるのは、セリカがそれほど家屋を吹き飛ばしているからだろう。
「良いですよ、手伝いましょう」
そうして、手伝う事になったのだが、ここに納得出来ない、二つの影があった。
「おい、睨むなよ、怖えな」
カイリと。
「うるさいわね」
セリカである。
「別に良いだろう、アイツだって良かれと思ってやってるんだ」
「そんなの知らないわ。
私は出迎えているのに、どうしてブラドを手伝う事になってるのよ…」
「おいおい、次元をいじってまで、言うことじゃないだろ」
「カイリこそ、どうしてここにいるのよ。
ここは私が作った空間なのよ。
貴女、次元を渡り歩く事は出来なかったんじゃないの?」
「誰が作った設定だよ、それこそ、そんなモン知らねえよ。
ただお前がそこに逃げる頃には、もうやり合うのに飽きたから追ってねえだけだろうが」
『そんなモン、拳だけで十分だろ』と、セリカの作った何も無い空を殴りつけると、新しい空を出来上がっていた。
「もうちょっと、丁寧にやりなさいよ」
さすがカイリとセリカの『魔力』や『賢さ』は5程度違うだけだったので、軽々と自分の作った次元をさらに捻じ曲げるのでセリカは呆れていた。
ちなみに詳しくなってないのは、二人がどれだけ張り合っているのかがうかがい知れるだろうか?
「ちなみに言っておくけど、私も飽きたからよ。
逃げてるワケじゃないから」
カイリは肩を竦ませて外界、つまりシュロ達を眺める事にしていると、シュロはドアを抱え、ダロタがネジを回す取り付け作業していた。
「しかし、アイツら、仲が良いな?」
微笑ましくカイリは見ていたのだが…。
気付かれる事の無い、この空間から何やら放り込む手がそこにあった。
「おい、何投げた?」
「シュロの店にある罠よ」
「商品投げんなよ」
だが、カイリ自身、事の次第が面白く感じたのだろう。
ブラドが歩いてくるであろう道に、タライが降ってくる罠を踏まないかと思ったのだから。
だが…。
「あっ、ブラドさん、危ないですよ?」
ここに絶対的な守護者がいたのを、魔王達は思い知る。
「おっ、ホントか?」
この時、彼は新たなる戦いの火蓋が切られている事を未だに知らず、微笑み返す。
「歩いていたら、踏んでましたよ?」