第二十一話 今日はブラド抜き その5
「ジャンケンか…。
前にも見た事があるが全ての命運を運まかせにする、その勝負。
実に、興味深い…」
おそらくドラゴンには出来ないからだろうか、力社会の彼らだからだろうか、レクターは誰かのモノマネをしながらその勝負を眺めていた。
つまり、今まで『勝負』をしていた。
セリカは、その敗者にクスクスと笑いながら語りかける。
「頑張ってね、シュロ」
何故、チョキを出したのか?
そんな独特の後悔に打ちのめされながら、勝者からブーメランを受け取り、少し大きめな通路からその部屋を眺めると、さすがに緊張してしまう。
「ほら、早く」
そうセリカは急かすが、やはり怖いものは怖い、セリカやレクターがいるから安全だと思ってはならない。
危ないモノは危ないのだ。
横を見てもらおう、レクターが鼻の先にある角でオークを小突いているではないか。
熱されていたのだろう『じゅ』っと音を立てて…。
慌ててダロタは逃げるように自分のそばに駆け寄ったが、やはり力社会の生き物なのだ。
隙あらばなんとやらである。
こんなモノを投げつけたために、ご就寝なさってるドラゴン御一行の怒りを買い。
地上までやって来て丸呑み、何て事は勇者様御一行でもやらないだろう。
「セリカさん…」
「あら、なあに?」
「守ってくださいよ?」
一応、そう言って大きく振りかぶる。
目標は赤いウロコをまとったレクターと一緒のレッドドラゴン。
何でそこを狙ったのかは、先ほどレクターを見たからでもある、さきほどのあの角、もしかしたら普段からとても熱されており。
こんな木で出来たブーメランなど燃えてしまうのではないのか、なんて…考えてもみたが、ほとんど賭けである。
しかし、大切な事を忘れていた。
ブーメランとは、真っ直ぐ飛ばないのだ。
曲線を描いたブーメランは首筋、延髄に見事に命中した…。
人間とはどうして緊張すると、その軌跡を目で追うのだろうか…。
そう考えられるほど時間が流れた、その時、ドラゴンがまだ眠っている事に気付いた。
「よかった…」
そう安心していると…。
セリカがさっさとそのフロアに入ってブーメランを取って、こう言った。
「はい、もう一度」
「もう一度?」
最初は冗談で言っていると思ったのだが、何となく気配を察した。
「鬼だ、鬼がいますよ」
「あら、私は魔王よ?」
クスクスと笑いながら、再度『もう一度』とブーメランを渡すが、少し学んだ事がある。
首筋を狙ったくらいでは、目覚めないのだ。
それなら、次に狙う箇所は自ずと限られてくる。
ウロコに覆われた胴体である。
あれだけ的が大きいのなら、先ほどのように予想外な場所に当たったとしても、ダメージすら与えられないだろう。
「行きます」
しかし、その時、意気揚々としていたのがわかったのだろうか…。
いや、自分の隣に魔王がいたのを忘れていたのが悪かったのだろうか…。
「えいっ」
魔王は完全に投げるタイミングの自分の攻撃力を上げてくれた。