第二十一話 今日はブラド抜き その3
「てなワケで第一回、シュロを助けろ新作会議ぃ~」
カイリが景気良く店の机をバシバシ叩き。
「ちょっと、カイリうるさいわよ」
といつものように、セリカがたしなめワナ作りにおける…。
『ブーメランを要してワナを作ってみよう』と会議をしていた。
モノの数分である…。
「な、なんてこった…」
「何でこんなに役立たないのよ…」
ここにいる人間は絶望した二人の魔王を見ていた。
『とにかく弓矢と違う、使い方にしよう』
そんなカイリの冒頭の一言から、出だしは快調だったのだが…。
「じゃあ、手軽にブーメランでワナを押すというのはどう?」
ダロタが椅子の上に立って、ホワイトボードに書き込み、カイリも負けじと考えをだす。
「さっき言ったように、痺れ薬なんて塗りつけてさ。人にぶつけるなんてどうよ?」
「あら、カイリ、貴女『弓矢とは違う使い方をしよう』なんて、言っておいてそんなの弓矢とかわらないじゃない?」
「なら、ブーメランの回転を利用して、薬をばら撒くなんてのは?」
それでセリカも妥協して、ダロタに書かせて、わきあいあいと会議は続いていたのだが…。
「んっ、どうしたシュロ?」
カイリが気になるくらい、自分の顔が曇っていたのだろう。
「二人に悪いのですが、ほとんど他のワナで代用できましてね」
「心配するなよ、だから、こうやってホワイトボード一杯になるくらいに提案してるのだろう?」
「ま、まあ、そうなんですが」
さすがに言い難そうなのを理解したのか、セリカは聞いてきた。
「ねえ、シュロ、とりあえず貴方、消してみていいわよ?」
少し申し訳なさそうに答えた。
「いいんですか?」
「良いわよ?」
「さすがに『引き』ますよ?」
「気になる言い方をすんなよ」
『遠慮するな』という意味だろう…。
そして、シュロは『遠慮なく』消したのだが…。
「一つだけしか残んねえのかよ…」
「一つだけ残ったのだから、カイリ、貴方は良い方よ。
ねえ、シュロ、私、怒っていいかしら?」
「仕方ないじゃないですか、さっきのセリカさんの提案でも『他のワナのスイッチを押す』って、そもそもブーメランじゃなくていいじゃないですか」
「あら、そんなワナってあるの?」
「そうですね、『弓矢』というワナが、しかも確実さを求めるならそっちの方がいいですよ。
そもそもブーメランって、戻らないといけないじゃないですか」
するとセリカは、先ほど自分の言った提案を全部言うが、そもそも…。
「それなら、ストレートにワナを発動させた方がいいですよ」
そんな結論ですべてが片付くのである。
「じゃあ、カイリも同じ事が言えるじゃない」
「それはそうですけど、『薬をばら撒く』の代わりにあのブーメランの軌道を生かして、トゲの床やら氷の床を作るというのが面白そうだなと思ったのですよ」
「結局、オレの提案も採用されてねえって事じゃねえか!?」
すると考え込んだセリカに続いて、カイリも思考に続いたのが数分前の事である。
そんな試行錯誤を続く中、一応、ブーメランのワナを作り机の前に置くと、やはりカイリが先に手にして、セリカに向けてスイッチを押した。
「ちょっとカイリ、ふざけないで」
軽々と飛来物を掴み、それを眺めるがさらさらと消えた。
それは自分の魔力がないためであるが、セリカは何かをひらめいた。
「何もダメージを与えるなんて必要ないのよね、ブーメランを消すなんてどう?」