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第二十一話 今日はブラド抜き その1

 「ねえ、シュロ、これ何?」


 セリカが箱から取り出したのは、『く』の字形の物体。


 「ブーメランですよ」


 「なんだってっ!?」


 すると驚いたのはカイリである。そして、興味深くセリカの手にしたブーメランを見つめて聞いてきた。


 「これって、投げたら戻ってくるって武器なんだろ?」


 「あら、何か魔力が働いているの?」


 「いや、そんなん必要なくて戻ってくるらしいぜ?」


 「嘘!?」


 信じられない表情で、セリカもブーメランを凝視した。


 となると、当然…。


 「ぶつかって戻ってくるなんて凄いじゃない、ねえ、やってみてよ」


 ますます、魔王の期待が高まるが、しかし、この武器の現実を知る人間、シュロは残念そうな顔をしたのだが、やってみたら理解するだろうと、外に出て、周りの安全を確認して投げてみて…。


 受け取るまでは行かないが、自分の近くに落ちると…。


 魔王二人の落胆の顔は、見て取れる。


 「シュロ、ふざけて…ねえわな」


 「結局、『ぶつける』武器ですからね。当たれば、やっぱり落ちるように出来てますよ」


 セリカも落ちたブーメランに付いた土を丁寧に払うが、それを冷ややかに見つめていた。


 「一応予断ですが、学校で習いましたけど、これが『投げる』という動作で、最も飛ぶ武器とされてるそうですよ?」


 「なるほど、確かに見たところ飛距離があったもんな、当たりそうな部分に刃物付けて、毒とか塗って狩りとかしてたんだろうな」


 「あら、取り損ねたら危なくないの?」


 「だから『戻ってくる』ってのを排除して、飛距離だけを重視すればすればいいだろ?」


 受け取ったカイリは、今度は自分もとばかりブーメランを投げる。


 最初は自分の投げたように地面に落ちたのだが、さすがは魔王といえるのだろうか、徐々にコツを掴んで手元に戻るように放り投げていた。


 それを見たセリカは聞いてきた。


 「でも、そんな武器を狩りに使うような人なんて見た事ないのだけど?」


 「それは弓矢の方が腕力を使わないで前に飛びますからね」


 ダロタが弦を引っ張り『プンッ』と軽い音を立てて弓矢を飛ばしていた。


 そうして、カイリも飽きたのかブーメランを手渡しながら言った。


 「悪く言うつもりはねえが、投げて手元に戻る武器なんて、そんな便利な武器なんかねえってこったな」


 そうケラケラと笑うが、このカイリ…。


 セリカとの食べようと思った果物を取られた事が原因の喧嘩の際に、空に飛んだセリカに向かって槍を放り投げた事がある。


 セリカは避けたのだが…。


 「ちっ、逃げられたか…」


 舌打ちをしたカイリは自分が投げた槍と同じ方向を見たが、しばらくすると…。


 『ズドン』と大きな音を立ててカイリの後方から槍が突き立ったのである。


 そのまま槍を引き抜き『返す』と言って、カイリは追いかけていくのだから、手元に戻る武器なんて必要ないのではないのかとふと思いもした。



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