第二十話 紅のダロタ その2
馬鹿にするつもりはない、だが、その踊りは…。
ズンドコだった…。
「そう不機嫌になるな、ダロタ、お前には無理だ」
そういいながら笑うヴァンパイアをみて、オークは不機嫌にもなるだろう。
そもそも、このダロタ、時折、格闘ごっこをしている時にムーンサルトプレスを必殺技にしているくらいに意外と運動能力の高い、そんなモンスターだというのは、自分でもわかる。
しかし、この2頭身モンスターはリズム感がないのかそれとも、そう解釈しているのであろうか、踊りとなると、あんな調子なのである。
そして、ブラドはダロタはどこからこんな本を取り出してきたのか、もともと知っていたらしく。
「どうせなら、別の踊りを覚えてみたらどうだ?」
『よっこいせ』とお店に前の住人の本なのだろうか、机の上にばらまくように大量の本を持って来た。
「ちょっと、ブラド、そんなにちらかさないでよ」
「これはすげえな、呪い、怨恨増幅、癒しに、加速に封印、ええと、まだあるのか流星招来、普段は興味なかったが、踊りってこんなにあるんだな」
そう言って今度はカイリ踊りだす。とはいえ、見本を見ながらというワケで本を片手なのだが、もともと身体を動かすのが得意だからかとても上手に踊っていた。
「へへ、どうだシュロ、回復の舞いだってさ」
そして、ブラドや自分と違い、魔力を感じるのだが…。
「ちょっと、カイリ、怪我もしてないのにそんな踊りを踊っても意味が無いでしょう?」
「なんだよ、一応、オレはあんまりシュロの身体に影響を与えないのを選んで踊っただけじゃねえか」
不機嫌になりながらも、カイリは踊りを中断したのだが、こう言った。
「でも、踊りなんて本番じゃあ、やっぱり役立たないな」
「本番って、戦闘の事ですか?」
「まあ、そうなるが、戦争レベルならまだ役立つかも知れねえけど、即効性がないからな。
徐々に回復するのはいいかも知れねえが、そこまで敵が待ってくれはしねえよ。
それだったら、いっその事、全回復をするような魔法を唱えた方が早い時の方が多いんだよ」
なるほどと、頷く中、またもやダロタが踊ろうとするが、今度はセリカに止められるのをみて、カイリはにやりとしていた。
「でも、踊りを踊らせたら…、これ面白そうだな」
そんな事を呟く、その様はまさに『魔王』、面白いおもちゃを見つけたような…。
カイリ自身、そう思っていたのだろう。
それは翌週のことである。
「な、何ですかこれは…?」
「シュ、シュロ、すまん」
魔王は謝ってきた。