第十九話 魔王の噂になる魔王 完結編
「まあ魔王が好む武器、剣とか杖とかいろいろありますけど、変わった武器を装備した魔王っているのですかね?」
「変わった武器ねえ…。
武器とはちょっと違うかも知れねえが、北の魔王のウルファングじゃねえか?」
また新しい魔王の名前が出たが、セリカは『ウルファング』と一言呟いて、合点が言ったのか、
「ああ、確かにアレなら、変わってるわね」
「そんなに変わってるのですか?」
「そうだな、伝説の金属ってヤツで出来た鉄球をこんな感じで…」
『パンッ』と軽く手拍子して何をするのか何となくわからせた上で言った。
「潰して盾にしたり、伸ばして剣にするようなヤツなのさ。
普通の剣で戦うのならどうって事はねえが、まあオリハルコンだから斬れるのなんの。この前なんか敵がやって来た時に、自分の城ごとぶった斬ってやがったよ」
「そういえば、あれが原因で城を持つのやめたって言ってたわね」
「攻め込まれた事より、コレクションが壊れた事がショックだったらしいからな」
「コレクション、何か集めていたのですか?」
「いやー、アイツ陶芸が趣味でさ。自分で作った壷やらを、城内で保存してたらしいぜ」
「ですけど、城が壊れたのは色々と不味いのでは?」
「良い所を言ってくれたな。そうなんだよ、おかげで荒れるわ荒れるわ、無法も無法だよ。
まあ北の地なんて寒すぎて誰も住み着こう何て思わねえがな」
『ケラケラ』とカイリが笑う中、空中で火の玉が踊り、何かの紋章を作り上げた。
「これがヤツんトコの紋章さ」
そう言って、それが自分にとって笑う事となった。
「そんなにおかしいの?」
笑いながら、お菓子の盛った小皿を、一旦、大皿に移しひっくり返す。
するとセリカも笑い出すなか、コップに入った飲み物を飲み干して。
…ひっくり返す。
「どうりで魔王に関して、詳しい人だと思いましたがまさか、あの人が魔王だと思いませんでしたよ」
ところでカイリさんって、弱点ってあるのですか?」
「そういえば聞いたことないわね、聞きたいわ?」
「んなモン、あるわけねえだろ!?」
ケラケラと明るく笑う中、カイリは店に出て行くとセリカは言った。
「逃げたわね…」
何を呟いたのかわからないが、次の週、ブラドは挨拶もさながら何かを取り替えていた。
「何をしてるのですか?」
「先週ほどかな、カイリが大陸を破壊したそうだ」
そういって、新しい地図を張り替えていた。