第十九話 魔王の噂になる魔王 その2
さすがにその後、何であれ魔王が倒されたというワケで、他の魔王たちの開いた会合にカイリ、そしてセリカが出向いたワケなのだが…。
「さすがカイリというワケか…、あの魔王シドは強さを誇示するクセがある愚かさが招いた結末とはいえ、あれで相応しい最後だったのかも知れぬな」
「して、聞いてみてもいいか、どんな最後かを」
「いや…その…」
カイリは言い難そうに頭を掻くのが、その倒した戦法を隠しているのと間違えたのか、まだこの影に潜んだ魔王たちは気づいていないのだろう。
「別に隠したところで、どうするというのかね?」
「そりゃ、そうだけどよ…」
カイリはじっと集まった、机を囲んで座っている魔王の面々を見回した。
その中にはセリカもいたのだが、『まあ、仕方ないのじゃないの?』と顔が曇っていたので、自分と同じような表情をしているのだろうかと思えてならなかったが言うしかないのだろう。
「即死魔法を唱えたら、一撃で…」
「何だって?」
「だから、即死魔法を唱えたら一撃で倒せた」
『きょとん』
この場の空気の音を表現すれば、これが最も相応しいだろう。さすがに他の魔王がこう聞いてきた。
「ふざけているのか?」
「ふざけてねえよ」
カイリは、その魔王に例を見せるように同じ魔法を唱えた。
当然、今度は眼前でかき消える、この事が余計にふざけていると思われたのか、殺気を含ませた視線がカイリを襲った。
普通の視線ではない、普通の人間やそこいらのモンスターは死に至るほどの視線。しかし、そんな視線を物ともせずカイリはどう言えば、信じてもらえるか困っていた。
そんな中を助けたのはセリカだった。
「悪いけど、立会人として言わせてもらうけど、カイリの言っている事は本当よ」
戦いの場に立会っていた人物がこう答えるのだ普通なら信じるだろうが…。
「なんという事だ…」
「ラスボスとしてどうよ…」
まるでどこかで聞いたようなざわめきが起こったが、一人の魔王が空いた席を見て『何か』に気付いたように言った。
「魔王シドって、もしかして魔王じゃないのでは?」
「馬鹿な、あの魔力の高さはありえんだろう」
「赤龍王 レクターのように強い魔力を持っていて、なおかつ何百年も生きて原型が解らなくなったモンスターとでもいいたいのか?」
さらにざわめき出し、『何だと私を疑うのか、いいだろう即死魔法を掛けてみるがいい』と最後には即死魔法の掛け合いが起ころうとしたので、セリカはカイリに言った。
「私、帰るから、後はよろしくね」
「おいおい、ほっといて帰んなよ」
「あら、元はといえばカイリ、貴女が原因じゃない。そのままじゃ、魔王の品格が問われるわ、貴女が始末しなさい」
そう言って、飛んで来た死の魔法の欠片を払いのけ、セリカは飛び去ったのだが、彼女も内心納得できなかったのだろう。
帰る内にイライラして、先ほどに至ったのであった。
「ああ、面倒くさかった!!」
そして、カイリも空から落下に近い速度で降りてきた。