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第十八話 意外な事を忘れていた魔王とシュロ 完結編


 「シュロ、何だ、この小さな…焚き火?」


 「こうやって灰皿で作ったのですが、これに名前を書いたお札をくべてください」


 「へへ、いい子は真似すんなってヤツだな。


 面白そうじゃねえか、とりあえず…」


 ホントは魔王が本気出せば、あのお札でも簡単に燃やせそうだったので、それを防ぐためではあったが、カイリは面白げに『とりゃ』と投げ入れるので、勢い良く炎があがりはするがそのまま空中で綺麗になくなるので。


 「あら、不採用ね」


 セリカにも好評だった。


 「けっ、だったら、そんなセリカはどうなんだよ?」


 「あら、私?」


 そういえば前に『オークライダー』と名づけたネーミングセンスがあったのを思い出したので、自分も少しばかり期待してセリカを見る。しかし彼女は一向にペンを走らせようとしなかった。


 「どうしたのですか?」


 「…見られると結構、緊張するわね」


 少し時間をくれと言うことだろう。


 「…何だよ、その繊細さ。


 まあいいや、シュロは考え付いたのか?」


 「えっ、私もやるのですか?」


 「当然じゃねえか、お前は店長なんだから」


 そう言われ、札とペンを渡された自分はしばらく考えた後、考え付いたのは。


 「『村のワナ屋さん』ね」


 「すいません、在り来たりで…」


 「いや、ベーシックこそ基本だよ。とりあえず今は数が基本なんだ、放り込んでみろよ」


 カイリの言う事も最もな事もあり、言われた通りに放り込んだのだが…。


 「燃えたわね」


 「まあ、しゃあねえよ。今は、数が基本だ。


 セリカも見てねえで手伝えよ」


 「私に命令しないでよ」


 そう言ってしばらく、三人で名前を書き続けた。


 シュロはベーシックに、セリカもベーシックに、カイリは自己中心的に…。


 「おい、セリカ、どうして普通に考えんだよ?」


 「カイリだって、何よ、そのセンス?」


 ちなみにセリカの書いたのは『魔王の休憩所』という。


 あながち間違ってなくて、何か意見があるかと聞かれれば言い返しも出来ず少し困ったが、先にカイリの考えた名前が目に付いたらしい。


 「別にいいじゃねえか、こういうのは誰かの名前が入ってれば興味を引くんだよ」


 『魔王カイリも驚いた 激安のワナ屋』


 何か古いキャッチコピーをつけたような名前に仕上がっていたが、二人とも渾身の出来だったのか。


 「じゃあ、公平に行きましょう」


 ダロタを呼びつけ、札を火にくべるようにしてダロタの手から二枚の札が投げ入れられた。


 自分は正直、あの二つの店名が採用されるのは、嫌だったので心の中で祈る。


 「これも駄目なの?」


 二人とも少し不機嫌にはなるが公平に行ったためか、再度、名前を考えていた。


 ちなみに少し考えてみたのだが…。


 『魔王カイリも驚いた 激安のワナ屋 魔王の休憩所』


 「あら、シュロ何か考え付いたの?」


 これは心の中にしまっておこうと思った。


 …その時である。


 『ガタンッ』という音と共にダロタが椅子から落ちた。


 「おいおい大丈夫か?」


 怪我がないようだが、一応の確認するようにカイリは心配をする。ダロタは『んだ』と返答して数枚、落ちたお札を拾う。


 「ああ、こりゃ駄目だな」


 お札を見たカイリは、それを炎の中に投げ入れた。


 「落ちた反動とこぼれたインクでダロタの手形がくっきりとついてたから、燃やすしかねえだろ?」


 そう言われ、ダロタも自分の手のひらに付いたインクで真っ黒になった自分の手の平に気づくが、先にセリカに言われた。


 「さっさと、シャワー浴びてきなさい」


 くすくすと笑う中、カイリはあくびをして札を整えながら言った。


 「しっかし、なかなか決まらねえモンだな」


 飽きたのだろうか、白紙の札を丸めて、火の中に放り込む。当然、テーブルに着く前に燃え上がり、続けて放り込む。


 「ちょっと、勿体無いじゃないの」


 セリカの静止を普段は聞かないカイリ、しかし、カイリは珍しく手が止まり札すらもセリカに手渡した。


 そして、そのまま炎の中に手を近づける。


 「カイリさん、危ないで…」


 自分は途中で何かに気づき、カイリが炎の中に手を突っ込むのを見ていた。


 何故なら、その札は燃えていなかったのだから… 


 そして、おもむろにカイリは丸めた札を広げる。


 するとそこには、見事にくっきりとした…。


 ダロタの手形があった。


 それを見た三人は、一斉に言った。


 「この話はなかった事にしよう」


 店の名前、未だに決まらず!!

 

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