第十七話 営業時間終わりの三人 その3
「じゃあ、シュロよ。
この踏むと、持ち物が消えるワナというのはどうだ?
これは凄いな、持ち物が無かった場合、突然メモリーカードをチェックし始めて他のセーブデータを消し始めるらしい」
「ウィルスじゃないですか」
これを最後に提案が出なくなったので、ここで今回の会議はやめる事にして、ダロタと外に出た。
「よっ」
そして先ほどの木刀を『ぶんっ』と振り下ろし、それをダロタが受け止めて反撃する。
『ぶん、ぶん』と一撃目は空振り、二つ目でシュロの身体に当たる様にスイングするが、それをシュロは空振らせるように避けて『ゆっくり』と突きを放つ。
当然、それを避けるダロタ…。
そして、むき出しになった頭をシュロは。
「ほっ…」
さらに差し出し『ポコリ』と一撃を食らい、ダロタと笑いあっているとファウルはため息混じりに聞いてきた。
「緊張感ないな…。
そういえば、シュロよ、魔力の方はどうなんだ?」
「魔力ですか?」
「いつもお前は魔導の壷を利用してワナを作っているから、今現在のお前自身の魔力はどれくらいあるのかと思ってな」
「そういわれてみれば、シュロよ、魔導の壷を通して魔力を消費しているとはいえ、そろそろ魔法の一つは出来るのではないのか?」
そう言いながら、ブラドは木の杭を取り出し、それに布を巻きつけて縛って。
「まあ、やってみろ」
地面に杭を突き刺して、そういうので半分緊張しなが放つその魔法。
「くくく…っ」
その結果はヴァンパイアと魔剣士を笑わせていた。
「…失礼ですよ、出来たじゃないですか?」
「そ、そうだがな、ファ、ファウル、何だ、ありゃ、火の玉がバウンドしてったぞ?」
「あれほど軌道の読みずらい火の玉ってのも珍しいな」
どうやら魔力の使い方である順序を違えるとそうなるらしく、自分の三回放った火の玉は、どんなにやっても地面に着弾して、さらにランダムに跳ねて目標にあたっていった。
その際『火の玉』が目標に当たったわけではなく、地面を跳ねることで火も消えかけ『芯』が見えたところで目標に当たるのだから笑いのネタになるのは言うまでもなかった。
「あの火の玉って芯があったんだな」
「ブラドさん、いい加減笑うのはやめてくださいよ。どうにかして治りませんか?」
「治すって言ってもな、あまり、初めて魔力を消費してるヤツにはあまりおすすめとかしたくないが…。
うーん。
じゃあ、詠唱をしてみればどうだ?」
「詠唱って、あのよく物語に出てくる魔法使いが『ぶつぶつ』ってするアレですか?
そんなの読んだ事ないですし、いまいち信じられませんよ?」
「じゃあ、見本を見せればいいのだな?」
そう言ってファウルが前に出て『離れていろ』と言われたので、離れていたのだが…。
「もう少し離れろ」
さらに離れろというので、ファウルは静かに目を瞑り詠唱を始めた。
-この世は、お金で出来ている。
-時には銅、時には紙…。
そして、瞑っていた目が開かれて目標に向けて剣を振りぬいていた。
剣自体、詠唱中、あったのか、手にしていたのかもわからない。その放たれた一閃は見事に目標を切り捨てていた。
「ブラドさん…」
「…なんだ?」
しかし、これだけははっきりした。
「ここまでの威力はほしくないです」
「うん、妥当だな」
ファウルの放った一撃は後ろにある店の屋根をも切り落としていた。