第十七話 営業時間終わりの三人 その2
「シュロ、わざわざ新しいワナを考えるのではなく、モンスターに技を覚えさせるというのはどうだろうか?
例えば水棲族が多くいるダンジョンには、水辺の通路が目立つだろう?
そこでだ、こんな技を覚えさせて見てはどうだ?」
そういって、ファウルは外に案内して、そこの近くにあるチャンバラ用の二本の木刀を取り出して『身構えてみろ』とシュロに差し出してきたので、受け取って身構える…その瞬間である。
「あっ」
間合いを詰め『コツン』と木刀同士が触れ合った瞬間、自分持っていた木刀は、あっという間に頭上高く舞い上がる。
そして、数秒後にはファウルが受け止めるであろう木刀を差しながら答えた。
「『刃崩し』というのだがな、この技を覚えさせて、冒険者の武器を跳ね飛ばして、水の中に落とす敵というのを作ってみたらどうだ。
水の中なら、攻撃される可能性の低さを利用して攻撃する水棲族の特徴を利用した。改良攻撃手段だ」
「すいませんがファウルさん、それはもう出た提案なのですが、後々無理だなと結論がすでにでてましてね」
「なんだと、結構いい案を出したと思ったのだが?」
「まあ、大変、言い難いのですが、そもそもこの『刃崩し』でしたっけ?
この技を装備を飛ばす敵がいるとブラドさんに紹介してもらって、その技を繰り出すモンスターに
『この技をするには、見上げる形になっている水棲族には難しいのでは?』
と言われたので実際、こうやって…」
ダロタと木箱をある程度つんで、今度はブラドがそれに乗って構えるとファウルが気づいたように言った。
「なるほど『間合い』か…」
「そうなんですよ、当然、槍とかでその差を埋まるモノだと思ったのですが…。
今度は…」
「まだ、問題があるのか?」
「水に住まうモンスターの水棲族って、下半身が泳ぐのに特化してまして、地上でそれを行うのは不可能らしいというのが判明しましてね」
「なるほど、根本的に無理だったという事か」
「それで最終的には、こうやってまず箱を片付けて…」
「ふむ、ブラドが足元近くなったな」
「それをダロタが持ち上げて…」
ポイッ。
元々、空を飛べるブラドが着地したところで、振り返って答えた。
「こんな感じでオークが、冒険者を水の中に放り投げるというのに至ったのですが、オークは水場が嫌いらしいので…」
「駄目だったというわけか、というより、まず箱ごとヴァンパイアを持ち上げた、ダロタをすごいと思え。
しかしな、シュロよ」
「はい、何でしょうか?」
「さっき、オークは水場が嫌いだと言っていたが、前にダロタがモリを持って魚をとっていたトコロを見たことがあるぞ?」
「ああ、ダロタは基本的に好奇心旺盛ですから、昔、ブラドさんに頼んで鉄巨人で作ったダイバースーツを着込んで潜っていたうちに潜れるようになったそうですよ」
そんな調子でダロタに目をやると『ぶしゅっ』と鼻から空気を出しながら、ガッツポーズしていた。