第十六話 ぐーたら義兄と暗黒義妹 その3
ブラドとセリカの従兄妹話に華を咲かせていると…。
「…ああああ!!」
真上でも飛んでいたのだろうか、吹き飛ばされたブラドが『どかん』と軽く爆発を起こしながら落ちてきた。
「しっかし、コイツ、タフだよな?」
自分たちにとってはいつもの光景だったが、その大きな音が何だろうと集まってきた。
下級モンスター達をカイリは『おら、どけ』と人払いをして、気を失ったままのブラドをつま先で小突いて答えた。
「いくら、ヴァンパイアが魔力の高い種族でも、セリカの一撃をこんな感じでまともに受けて平気なんだからよ」
「平気じゃないでしょう、気絶してますよ?」
「いやいや、さっきのセリカの魔法は上に向けて打っちゃいるが、島を一つ無くすくらいの魔法だぜ?
普通は消滅モノの攻撃をまともに受けて、これで済むってのは考えられないだろ」
「そこはさすがにセリカさんも手加減したのでは?」
「へっ、あのセリカに手加減が出来ると思うか?」
確かに最初のようにお菓子を先に食べようとしてセリカに吹っ飛ばすされたり。
ブラドが大体ロクな事をせず、セリカが吹っ飛ばされたりなど。
そして、カイリがイライラするからといって紅茶を差し出したブラドに八つ当たりしたりなど…。
いや、最後はカイリだったが、今まで、従兄妹話に華を咲かせていた性もあって、今までを思い出すことには苦にはならなかった。
「…よく生きてますよね?」
「まあ、その辺だけが従兄妹らしいといっちゃ、らしいけどよ。
そういえば、ショロにも妹がいるんだっけ?」
「はい、リリって言いますけど、カイリさんは兄弟はいるのですか?」
「いんや、俺んトコは親がいないからな。ただ珍しいのさ」
悪い事を聞いたなと思ったがカイリは『ぽん』と肩を叩いて笑いながら答えた。
「気にすんなよ、魔界じゃあ、よくある事だからな」
気を使わせてしまったのだろうか、何か話を切り替えようと少し困ったがそこにセリカがやって来た。
「あら、カイリ、貴女はいつから勝手に人様の家から、こんなのを持って来るようになったの。
とっとと、帰りなさい」
「けっ、随分と言葉使いがへんな魔王様だな。
別に構わないだろう、前に他の国の魔王どもをそそのかして、オレんトコに差し向けたんだ。
これくらい見逃せよ」
「あら、何の事かしら、それは貴女の思い込みじゃない?」
「どうだか、一段落付いた途端、お前のトコロの軍は、まるで計算していたかのようにその周囲の国に攻め込んだじゃねえか?
しかも、支配をじゃなくて降伏を求めるようにするんだから性質が悪いぜ」
あくまでとぼけるつもりだったセリカは、さすがにバツが悪いのか翼を広げて大きく踏み込んで答えた。
「…気のせいよ」
そして、飛び立った。
…ブラドを踏み台にして。