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第六話

「あら、早いのね?」

 そういうとようやくセリカは開放してくれた。


「じゃあ、指輪を掲げますよ」

 シュロは気を取り直すようにそう言い、周りの安全を確かめて指輪を掲げ、本に載ってあったスイッチを思い浮かべた。


『コオオオー』


 ツボが空気を吸い込むように、辺りに風を起こした。


「あれ、何かおかしくありません?」

「そうだな、さっきは『ポンッ』と軽い感じで出てたよ…な?」

 すると次の瞬間セリカは羽を広げて飛び上がり、二階の窓からガラスを突き破って一足先に逃げた。


 …『一足先』に?


「逃げろシュロ!!!」

 ブラドもその窓から飛んで逃げたのを見て、シュロもドアに向かって全力で走った。


「すんません、オラ、街で張り紙をみたモンですが?」

 そのドアが開いたかと思ったら、何故かオークがこの家に訪ねてきた。


 どうしてオークが?

 という疑問より、身体がオークを抱えて走っていた。


 おかげで走るスピードが落ちたが、今は走る事に専念しないと自分の身がヤバイ、オークも何が起きているのかわからないのか抱きかかえられているままだった。


 そして『カッ』という光と共に、シュロとオークの身体は中に舞い地面をゴロゴロ転げた。


「おい、シュロ、大丈夫か?」

 気が付くとブラドに横っ面をペシペシ叩かれていた。


「あ、はい、大丈夫です」

 と目を覚まし、後ろの方を振り返ると家が吹き飛んでいた。


「一体、どういう事かしら?」

 そうして魔王様はお怒りだった。


 まあなるのは分かる、それは一日で家を紹介して、一日でツボだけを残して家が崩壊をしたのだ。

 要は探索2回目で、一日で施設を紹介して、その日の内にその施設が吹っ飛んだのだ。


 おかげで二人の人間とモンスターは正座だ。


「材料はよかったのですか?」

「あらシュロ、私を疑うの?」

 少し殺気が混ざった視線でこちらを睨むが、原因を探さないと何の解決にならないので、セリカの持っていた本をブラドに手渡し読ませてみた。


「材料の方は合ってますね。」

 

「だとしたら、数量ね。

 ブラド?」

「で、ですが、セリカ様、私も数量入れましたよ。」


 セリカの周りの空気が歪みだしたので、ブラドは恐怖に慄きながらも言い返す。

 すると、空から焦げ付いた材料が降ってきた。


「矢が6本、盾が3つ、ありますね。」


「あの、その盾、呪われてますだよ?」


 すると、さっき助けたオークが盾を指差して遠慮しがちに言う。


「あら、誰、貴方?」


「この張り紙みたモンですだ。」


 オークは被っている兜から一枚の張り紙を取り出し、セリカに見せた。


「ああ、アルバイトの…ちょっと、ブラド、事情を説明してあげなさい。」


 セリカは思い当たる節があったようだった。

 どうもバイトも雇い入れる予定があったらしく、ブラドはそのオークに事情を説明している。


「それよりセリカさん、この盾が呪われているせいで、ツボが爆発したんじゃないですか?」


「そんな事なら、書いてるはず…あら。」


 …どうもあったらしい。


 そしてその呪われた盾を放り込んだのも、呪いの効かないモンスター・ヴァンパイア=ブラドというのが手伝い、分からなかったようだ。


「こうなるとお互い悪かった事になりますね?」


「そういう事にしておくわ。」

 ため息をつきながら、セリカは納得してくれたようだ。


「じゃあ、店がなくなった以上仕方がないから。

 また店を用意するから、来週来てもらおうかしら?」


「来週ですか?」


「貴方って、週に一度しか洞窟に来れないのでしょう?」


「ああ、なるほど。」


「それじゃあ、帰りましょう。

 そこの二人は、後片付けよろしく。」


 相槌を打って、二人のモンスターは回収作業に移った。


「じゃあ、お先に失礼します。」


 そういうと、二人は手を振って応えたのを見て少し笑ってしまった。


「どうしたの?」


「いや、『お先に失礼します』なんて、魔界で言うなんて思っても見ませんでしたから、思わず笑ってしまったんですよ。」


 最初は普通に仕事を探していたのだ、『お先に失礼します』というのも、普通の仕事の中で言うセリフなのだろうが、洞窟の探索なんて事をしているので言う事がなかった。何故か魔界で言うなんて事を予想出来ただろうか、考えて見ると変な話だったので笑わずにいられなかった。


「そんなモノなのかしら?

 そう言えば、私にも今日こんな事があったのを思い出したわ。

 貴方が、私の事を『様』づけで呼ばなかった事かしら?」


「あっ、もしかして…ダメでした?」


「別にいいのよ、ただ、とても新鮮な気分だったわ。

 こんな気分になったのは久しぶりよ。

 だから特別に許してあげるわ。

 これからは『さん』づけで呼びなさい。」


 軽く笑みを浮かべながら、セリカは洞窟の前で帰還の石を手渡す。


「じゃあ、この洞窟に入ってから、この帰還の石を使いなさい。

 来週の2階でいいのかしら?」


「あ、はい。

 それじゃあセリカさん、また来週。」


「またね。」


 そう言って、また笑いながら手をふるセリカを見て、シュロは洞窟に入り家路に着こうとするが、重大な事に気付いた。


「あっ、今日の稼ぎを稼いでない。」


 そうして、少しアイテム集めに勤しむ事にした。


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