第十五話 学校行事のセリカ その4
その頃、カイリのいる国では…。
「けっ…」
悪態を付きながら、自国に攻め込んできた魔王と戦っていた。勝負は圧倒的にカイリが優勢だが、当のカイリの顔には焦りあった。
「いい加減に…しやがれっ!!」
後先考えない自身の魔力を全開にして戦う様は、カイリらしさをみせて、その一軍勢を先ほどの一撃で塵へと変えた時、更なる伝令が届いた。
「カイリ様、今度はわが国の南の方角から別の魔王が攻め込んできました」
「ああ、またかよっ、今日は七回目だぞ?」
一体どうなってやがると、サコンを睨みつけたがわかるワケがない。
群雄割拠している、ここ魔界において隣国の魔王が他の国に攻め込んでくるというのは良くある。
ただカイリとて普通の魔王ではなく、一応、魔界では知られているほどの戦闘能力を有している魔王なのだ。
その魔王相手に、下っ端魔王どもが我さきにと自国に攻めてくる事、さっきも言ったとおり七回目…。
まるで、もぐら叩きのような雰囲気を思わせたが、東西南北、東南西北とさっきから自分の国を行ったり来たりとしていたら、普段、明るいカイリもさすがにイラついているのなか、サコンが聞いてきた。
「消耗戦のつもりなのでしょうか?」
サコンとて、いや、カイリという魔王の事を知らないモンスターは魔界にはいない。
「サコン、俺を誰だと思って聞いてんだよ?」
彼女にはそんな事ほど意味がない、こうしている間もみるみる内に傷が塞がり、大きく息を吸い込んで伸びをしているともう魔力は全快しているのだから…。
おかげでサコンはまた睨まれたと勘違いさせてしまったが、カイリにはそんな事構う事無くイライラして、軍勢に声を上げた。
「お前等、私の週末を奪って、ただですむと思うなぁ!!」
そのころ、シュロたちはというと…。
「なあ、みんな、ここらで、弁当にしようぜ」
ダンジョン未踏者の二人が隅々まで探索をしていたためか、5階で昼時を迎えて、休憩をとっていた。
「あら、シュロ君、そんなトコロで何をやってるの?」
「次の階って、いよいよ6階ですから、どんな感じなんだろうと思いまして…」
「そういえば、貴方ってここまでしか来た事がなかったのよね。気になるの?」
まあ、そんな感じだと頷いていると、クライトとゲンタの会話が耳に届いた
「なあ、ダンジョンって昔、怖かったけど意外と大した事がなくてよかったな?」
「そうですね、一時は週末を潰してまでやる事かと思いましたけど、これなら大丈夫そうです」
二人の会話の中に『日曜日』とキーワードが打ち込まれたとき、セリカに聞いて見た。
「そういえば、カイリさんは?」
そう、この人はこんな楽しいイベントを逃すわけがないからだ。
「ああ、カイリなら今頃、自分の国に他の魔王が軍勢で攻めて来たらしいから、今日はその対応に当たってるわ」
「対応ですか…」
「あら、カイリの事が心配なの?」
「それは心配ですよ…」
「まあ、立ち向かう魔王たちには悪いけど、カイリはあれでも私と普通に張りあえるんだから、心配するだけ無駄よ。
…私はただその魔王達に、貴方がダンジョンを探索するまでの時間稼ぎに利用するつもりで、そそのかしただけよ」
「えっ、最後なんて?」
セリカは『なんでもないわ』と微笑みながらそう言って、そのまま後ろを向いたゲンタ達の近くに『ふわり』と降り立って驚かせていた。