第十四話 カッパにご用心 その3
さすがに魔界でもその状況は気になったのか、数々のモンスターがこちらをのぞきこんでいたが…。
そこに、少女が一人立っていた。
「お兄ちゃん、何があったの?」
「えっ、ああ、ゴメン掛かった?」
衣服が汚れていたので明らかに壷の中身を被ったのだとわかり、一言謝って、ブラドに事情を話す、すると彼女を様子をじっと見ていた。
「どうしました、ブラドさん?」
「いや、何でもない」
だが、ブラドはその少女をまじまじと見ていたが、先に気になったのは少女のほうだった。
「ブラド、人をそんなにまじまじと見つめたら失礼だと習わなかった?」
「あれ、ブラドさんを知っていると言う事は知り合いなんですか?」
そう聞くが『どこかで見たような…』と言って、考え込んでままだった。
「ねえ、お兄ちゃん、とりあえずシャワー浴びたい」
断る理由もないので、ダロタに案内させるとその少女は振り向いて答えた。
「覗いたら、駄目だからね」
「覗きませんよ、あっ、そうだ」
「なあに、お兄ちゃん?」
「貴女の名前を聞いてませんでした」
するとその少女は『金色の髪』をなびかせたトコロでブラドが気付いた。
「ああっ!!セリカ様っ!?」
「なあに、ブラド、大きな名前で私の名前を呼んだりして?」
頷いた代わりに『シャワー浴びている間、服を洗っておいてね』と答える、小さなセリカ…。
「カッパは、とんでもない事をしてくれました」
そんな素直な感想に3人は頷くが、呟くだけで現状を打破できるとは思えないが、結局『ピー』という洗濯機独特の終了の合図を聞くまで打開策が浮かばなかった。
「セリカさん、洗濯物渇きましたよ」
ドアをノックしてそういうと、『にゅっ』とドアから白い手が伸びてきたので『ちょうだい』という意味なのだろう、手渡すとそそくさと元の位置に戻ると、着替え終わった普段より小さい魔王が入ってきて、机の開いてる席に座ってこう言った。
「ねえ、3人とも、普段からこうなの。こんなので、お店をやっていけてるの?」
一言で言おう、不愉快である…。
『ピッ』
たまらずブラドが手をTの字にして、タイムアウトをとる。
「どうしましょう?」
「どうするって、セリカ様に大人しく帰ってもらうしかないだろう…」
「いくらセリカさんでも、ここは魔界ですよ。それは危なくないですか?」
「いや、大丈夫だ、小さくなっても本来の魔力は今も昔も強大なのは変わってないからな。
城の連中も馬鹿ではない、事情を話しておけば理解くらいはするだろう。逆にここにおいている方が危険だ」
「どういう事ですか?」
「いい機会だから、セリカ様の昔のあだ名を教えといてやろう…」
『幼さ故の破壊神』
それが、あそこに座っている彼女のあだ名だった。