第十三話 魔王に渡してならぬ物 完結編
「それで、今日、ダロタは?」
「ああ、今日は田植え休みだ」
「リアルですね」
その時、『バタン』と勢い良くカイリが、突如来訪して来た。
「シュロ、遊ぼうぜっ!!」
当然、事情も知らない事も手伝い、物の見事に『スイッチ』を踏んだ。
木の矢が飛んできて惨事を招くと思われたが…。
「シュロ、うつぶせになって何をやってんだ?」
矢じりのない矢を『むんず』と右手に受け止めた流石に魔王と思っていたが、まだ油断は出来なかった。
彼女の『普段の動作』がとても危険だからだ。
「カ、カイリさん、それをください」
『あん?』と意味深げに聞こえたのだろうか、顔をしかめながらこちらへ歩み寄ろうとしたが…。
「カ、カイリ様、出来れば宙を浮いて、ゆっくりとこちらへやってきてください」
「へっ、何だよ、まるで『ここが地雷原です』みてえな言い方じゃねえか…」
『俺に命令すんな』と言いたいのだろうか?
『ここは正にその通りなのですよ』と言おうとしたが、その前にカイリが『ムッ』としながらブラドに思い切り良く投げた。
「のわああああ!!」
『思い切り投げた』のだ。
当然、捕れるわけもなくブラドは避けた。
そして、まあ、コレはお約束通りと言っておこう。
床に落ちたばらばらになった木の矢がワナを発動させるスイッチを押して、しばらくした頃…。
「す、すまねえ、シュロ…」
「いや、私もね…。はっきり言わないからこんな事になったと思ったのですよ…。そして、カイリさん、もう少し緊迫した状態だという雰囲気くらい…察してほしかったですね」
「あ…ああ、確かにそこは毎回…気をつけねえといけねえな、なんて、思ってたんだけど…シュロ…」
「カイリさん、もう、良いじゃないですか…」
「だがな、シュロ…」
だが、ブラドは自分より年上なのだろうか、もう少し注意しろと言おうとしたのだろう。
「もう良いじゃないですか…」
家の惨状は、もう酷いモノだと言って、命があっただけマシだと思い、自分にはもう力が残されてなかったので、『軽く』カイリを説教しておく程度にした。
「シュロ、終わったかしら?」
すると今度は、セリカが入って来た。
当然、この20分のやりとりで全部撤去し終える訳もなく、セリカも『シュロ』に気付いた。
「シュロ、焦げ臭いわよ?」
そう言って、入って来ようとするので、慌てて止めた。
「セリカさん、だからって『まだ』なんですから、入って来ないでくださいよ」
だが、セリカはよほど入りたいのか一歩踏み出そうとする。
さすがにこれ以上は、危険だっただろう、魔王相手に…。
「ステイ!!」
そんな具合に止めたが、セリカは構わず片足を上げる。
「ステイ!!」
片足を指で指して『下ろせ』とは言わず、彼女と頷きあいながら指摘する。
その指摘どおりセリカは、一旦、足を下ろすが、また、上げようとしたのが長年、従者をやっていたブラドが気付いたのだろう。
「ホーム!!」
…ブラドさん、それは『帰れ』って意味ですよ。
「!!」
そう考えるのが早いか、見事に家屋ごと吹き飛ばした魔王。
飛んでいく瓦礫を見送りながら、自分も吹っ飛んでいると背中の辺りで誰かとぶつかった。
ゴロゴロゴロとその誰かと転がり、誰かが何となく理解できた頃。
「いてて、セリカのヤツ、気をつけろってんだよ…」
一緒に転がったカイリは自分の後ろでそう言って、ボヤいていた。
「シュロ、怪我は無いか?」
おそらくカイリのおかげなのだろう、自分には怪我はなく礼を言うために振り向いた。
「おかげさまで、怪我は…」
言う途中で、思考がある一点を注目しながら一旦停止した。
「あ…」
そのおかげでカイリもそう呟いて気づいてしまう。
「…っ!!」
声にもならない声を上げて、いつも纏う赤いオーラと、それ以上に真っ赤になる魔王…。
そして隣に落ちてきた、『預言書』があのページ開いていた。
何が起きるのかわかった僕の取る行動は一つだった…。
翌週…。
「シュロ…」
正直、ブラドの顔を見る事は出来なかったが、ブラドは『何故か』顔を張らせながら一枚の紙を自分に差し出していた。
「慰謝料ですか…」
今回は短くしてみました。
感想お待ちしております…。