第十三話 魔王に渡してならぬ物 その2
遅れました!!
出会うなり二人はあっという間に臨戦態勢に入る。
しかし、普段ならカイリの方からセリカの城に飛び込み、セリカを挑発して、喧嘩になるのだが、今回は珍しく、セリカの方からやってきた事がカイリは気になったのか聞いてきた。
「んで、俺んちにやって来て何の用だ?」
「あなたが読書している何て聞いたからよ。
もう魔界中、あなたが読書している事で大騒ぎよ?」
「俺が読書したら、何か起こるってのかよ?」
「まあ、天変地異の前触れでしょうね」
セリカの悪態に『うるせえ』と一言答えて、医学書から、元読んでいた本へと目を移し『ふむふむ』と頷いているのが、よほどセリカは気になったのだろう。
「あなたをそこまで熱心に読書をさせる本なんて、どんな本なの?」
「あん…、これだよ?」
そう言って、カイリはセリカの前に差し出した本…というより、漫画だった。
「いや〜、少女漫画っていうのだけどよ」
セリカはしおりを外して、そのページを目を通すと何となくカイリが何がやりたかったのかわかった。
「もしかして、あなた風邪を引こうとしたの?」
「ああ、風邪引いてシュロに見舞いをしてもらおうと思ってな…」
「呆れたモノね…」
「うるせえな、これは俺の計画なんだ。お前には関係ねえだろう?」
両手を広げ、更に自分の部屋の温度を下げようと冷気を強めた。おかげで門番の二名はもう凍りついていたが、セリカは平然と答えた。
「いいカイリ、あなたは目を閉じて、大きく深呼吸するだけで体力のだいたい八割を回復する事が出来るのよ?」
「ああ、俺だってそんな事は解ってるさ。お前にだって、2ターン目には完全回復する魔法がが自動的に詠唱される事くらいもな?」
「それを踏まえた上で聞くけど、あなたが『風邪』を引くのよ、どれくらい悪性の風邪だと思ってるの?」
さすがにセリカも許可を出さないというより、伝染病の類ではない限り、自分が『病気』にはならないとカイリは理解したのだろう。
冷気を止めて諦めた様子だが、明るく笑いながら答えた。
「しゃーねえか、じゃあ、この本セリカにやるよ」
「いらないわよ」
「遠慮すんなよ、意外と参考になるかも知れねえぞ?」
『ケラケラ』と笑いながら、カイリはもうその本には興味をなくしたのか、その部屋を出て行くとそこには、セリカとその本が、この部屋に残されたのであった。