第四話
「まあいいわ、今から魔界に行くからついてらっしゃい。」
そういってセリカは黒い帰還の石を出してそれを掲げた。
「ところで、一ついいかしら?」
魔界のモンスター達の街中を歩く最中、セリカは一方的に聞いてきた。
「あなたって、年いくつなの?」
「今年で17ですけど?」
「あら、私の一つ下じゃない。」
「えっ、そうなんですかっ!?」
「いくつだと思ったの?」
「……。」
「あのねえ、それは種族によっては万年、千年生きてるのもいるけど、私達の種族は人間とあんまり変わらないのよ?」
幸いセリカは怒らず呆れてくれた。
「えっ、じゃあ、セリカさんは何歳の時に魔王となったんですか?」
「そうね、16の時だったわ。
年も離れてないのだから、セリカでいいわよ?」
「16…ですか。」
「あら、貴方も何かあった年だったのかしら?」
「父さんが亡くなった年でした。」
「そうだったの、それは清々したでしょ?」
「そっ、そんなっ!?」
「隠す事は無いと思うわ?
私だって自分の父を消した時は、気持ち良かったもの。」
聞くところによると、セリカの父親はどうしようもないヤツだったらしい。
だけどそれはセリカの父さんのケースであって、その目線で世の中の父さんを見ないほしかったのでついセリカの方を見てしまった。
「あら、怒ったの?」
「……。」
おそらく何を言っても無駄なような気がした。
セリカが見た父親像は、しばらく続くだろう。
そこに自分の父さんはこうだと言っても理解、というより受け入れるのは、たった一年経つくらいでは変わりようがないからだ。
「…この話は、やめにしませんか?」
「…そうね、やめましょう。」
「…どうして、殺さないのですか?」
「何、急に?」
魔界の街中で、しばらく沈黙を続いたので少し気になった事を聞いてみた。
「ほら、この指輪って、装備者の死が呪いを解除する条件でしょ?
あの時、一番手っ取り早い方法は、これだけだと思って。」
実際は死にたくないが、魔王を含め『王』というモノは基本的に『無駄』が嫌いというのは、有名な話だ。
この場合、一番の『無駄』は自分であり。
当然、『無駄』を省く手段は当然、自分の死だという事だからだ。
「ああ、その事ね。
ブラドってヴァンパイアいたの覚えてるかしら。
あいつと私って血縁上じゃ、従兄に当たるのよ。
それであいつに『危害を加えない』という、約束したでしょ?
あれって、契約の意味合いもあって、それで守らないといけなくなってるのよ。」
そう言ってる口元が緩んでる。
…多分面白そうだと思ったのだろう。
「ここが貴方のお店よ。」
歩いている内に目的の場所についたようだが、セリカの一言に驚いてしまった。
「お店っ!?」
「あら、建物が気に入らなかったかしら?」
「いや、そうじゃなくて。
てっきり、工房かと思ったんですよ。」
するとドアが開き、そこからブラドが出てきた。
「セリカ様、今、家の中の整頓が大体終わったトコロです。」
「まあまあね。」
セリカは家を一通り外見を見て、ドアを開けて中に入って行ったので、シュロも後に続いて中に入ってみると本当に『お店』をするつもりだろう、カウンターまできちんと準備してあった。
「お店を経営する話は分かりましたけど、ちょっと問題がありますよ?」
「経営の事なら、ブラドに任せてあるから大丈夫よ。
貴方はちゃんと『ワナ』を作って、経営すればいいの。」
「いえ、ですから、『ワナ』を作る自分に問題が…」
そうだ、自分は魔力の消費の仕方すら、この前知った初心者なのだ。
一度だけ注文するのならいいが、大量に量をこなすとすれば話が違う、生命の危機に晒されてしまう。