表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/155

第十二話 三人集まれば、巨人合体 その5

 三人の周囲に緊張が走った。


 「…ブラドさん、確か『龍のウロコでビックビジネス』って言ってましたよね?」


 「おいおい、シュロ、こういう場合は店長が…」


 「じゃあ、オラは関係ないだな」


 『むんず』と掴んでダロタの肩を放さないのは、ブラドだろうかシュロだろうか?


 「ダロタ、何、関係ないって、顔をしているのだ?」


 「ダロタ、こういう場合、何て言うか貴方の辞書に書いてあるはずでしょう?」


 「勘弁してほしいだよ。


 オラだって、食べられたくないだよ」


 「大丈夫、ダロタ、相手はレッドドラゴンだ。


 真面目な話、手加減くらいはするはずだ」


 「そうですよ。


 その証拠に、レクターさんの目の前に小鳥が数匹、戯れているじゃ…」


 『パクリッ』


 「…ね」


 レクターの『ある動作』にさらに凍り付いたのは、ダロタだけではなかった。


 「…よし、じゃんけんしましょう」


 「公平な勝負に身を任せるという事か…」


 「負けたら、レクターの相手だべよ」


 そうして、命がけのじゃんけんが終わった…。


 「よっし、よっしっ!!」


 そこにはオークと人間が喜び合う姿があり、そして、敗者の姿があった。


 「じゃあ、ブラドさん、よろしくお願いします」


 レッドドラゴンと向かい合うヴァンパイア、ブラドの手にはドラゴンが最も嫌う武器と言われる『ドラゴンキラー』が握られていたのだが…。


 「いや〜、ブラド、武器って、装備すれば何となく格好みたいなモノって付くでしょう?」


 「何が言いたい?」


 「初めてですよ。こんなに武器が、心細く見えたの…」


 「だったら、変わってほしいものだな」


 当然、『嫌だ』と答えるこの2つの種族は、ヴァンパイアから見て、どう見えただろうか?


 だが、それだけレベルが一回り、二回り、それ以上に違うという事だろう。


 そんな事を思ったのだろうか、距離を離れると、ブラドも少し緊張していたのだろう。軽く深呼吸して身構えるのを見て、レクターは『すうっ』息を飲んで答えた。


 「戦う前に吸血鬼よ。お前の名前を聞いていなかったな」


 「ブラドだ。


 セリカ様、直属の部下だが、今はワケあって、シュロの店を手伝っている」


 「ふむ、ではブラドよ。


 かかって来るがいいっ!!」


 言った途端にレクターは見事な『ハウリング』を上げた。


 しかし、このブラドは、さすがにセリカ直属の部下と言った事だけはあるのだろう。


 音という空塊を横に飛んで避けて、前を向いて答えた。


 「いくぞっ!!」


 その瞬間だった…。


 走り込んできたレクターの体当たりをモロにくらい、ブラドの身体を軽く宙に浮かせて、尻尾で『ばちこんっ』と跳ね飛ばし、空中にいた標的を火の玉で打ち落としていた。


 …ブラドが『いくぞ』と言って、1秒間の出来事だった。


 「…シュロ、やっぱ無理だ」


 しばらくして、ブラドは身体を焦がしながら、まだ、生きていた。


 「ふむ、やはり無理か、となると残りに期待しても無理だろうな。


 ところで、ブラドと言ったな。武器はどうした?」


 気が付くと、ブラドの手には『ドラゴンキラー』がなかった。


 「そういえば、尻尾が当たるまで持っていたのだが…」


 そう言って、ブラドはどこに行ったのだろうと、キョロキョロしていたが、それは意外なところにあった。


 「レクターさん、尻尾ところに…」


 「んっ、その辺りには落ちてはいないが?」


 「いえ、違います…」


 正直、言い辛かった…。


 「ああ…」


 ブラドはやった本人だとしても不可抗力だったので、それしか言えない。


 そんなトコロに、ドラゴンキラーはあった。


 「おおっ、こんなトコロに…」


 おそらく自分の尻尾の振りがあまりにも速すぎたのが原因だろう、その剣は鱗の隙間を掻い潜り見事に突き立っていた。


 だが、レクターの態度は意外と淡々としていた。


 「あ、あの、レクターさん、痛くないのですか?」


 「この程度を『傷』といって、何をドラゴンというのかね?」


 そう言って、最初は首を回して、口でドラゴンキラーを咥えるつもりだったのだろう。


 『ズシン、ズシン』と軽く身体を一回転させて、シュロに言った。


 「すまないが、抜いてくれないかね?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ