第十二話 三人集まれば、巨人合体 その3
「おはようございます」
週末、いつものように二人に挨拶をして、いつものように営業を始めるシュロの姿があった。
そして、本日の営業を済ませると、いつものように…。
「『玄関先の掃除、アンタ、まだだったみたいだから、やっておいたわ』」
いつものように…。
「『べっ、別に貴方のためにやったんじゃないんだからっ!!』」
……。
「二人して何を悪趣味な事をやってるんですか?」
「いや、この前、地上でな。
『ツンデレ』というのが流行っていると聞いて、そこで、その国の昔の遊びを組み合わせて『ツンデレ百人一首』というのを作って、メイド喫茶にでも売り込もうと思ってな」
『な』のトコロで、自分に背を向けていたダロタとブラドは笑いあっていると、やっぱり『あんな夢』を見た後だったのせいもあったのだろう。
めくり…。
気が付くと、自分はダロタの身に纏っていたマントをめくっていた。
「…シュロ、何やってるだが?」
さすがに失礼だと思ったので、事情を説明すると店内をさらに笑い声を大きくしていると、ブラドは首を振りながら答えた。
「まあ、夢だからな。
私も見た事があるから言えることだが、何でもありなのが夢の良い所なんだろうな」
「ブラドも見た事があるの?」
ようやく笑いが収まったのか、ダロタもあるらしく『ふごふご』と鼻を鳴らしていた。
「この前なんか、何故かレッドドラゴンと戦っていてな。
…まあ、夢だから、どう戦っているかは詳しく覚えていないが、突然、そのドラゴンがブレスを吐いたんだ」
『こう、至近距離でな』と手振りでブレスを表現をしながら、その時どうなったのかと聞くと、ブラドは『夢だからな』と始めに釘を刺して軽く言った。
「『あぃ!!』と掛け声で、片腕一本で『ブレス』そのものを受け流していたよ」
「どんな夢を見ていたのですか!?」
そう言って、笑おうとした。その時、突如、地響きが起こった。
「ほう、私のブレスは、そんなに簡単に捻じ曲げられるというのかね?」
『ズシン』と一際大きく、家屋が揺れると壁を突き破って、それは出てきた。
「始めまして、キミがシュロだね。
私はレクターという、まあ、見てのわかる通りだな」
まるで剥製のように顔だけを突き出して、さっき話に出ていたレッドドラゴンはブラドに向かって聞いてきた。
「それでそこの吸血鬼よ。
空を飛んでて、耳にしたのだがな。
さっきお前は『片腕一本でレッドドラゴンのブレスを受け流した』と、耳にしたのだが、それはホントかね?」
「い、いえ、これは夢の話ですから…」
いつもなら、『それは夢の話だ』と軽い調子で言うブラドだが、さすがに相手が『レッドドラゴン』だったので、かしこまりながら答えていると、このレクターは頷きながら答えていた。