第十一話 シュロの災難 その7
順調に仕上げる
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オレ、得意げになる
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評価気になる
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返信、一ヶ月も遅れてる
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オレ、凹む
以上、今日の心境でしたw
だが、冷静になると大変な事態になってしまっている。
それは二人が『黙れ』と言った時からなのだが、その次が問題だった。
カイリは『放り投げて』、セリカは自分より体格の大きな男を『ひい』と恐れをなすくらいに睨みつけて、明らかに女性らしからぬ事の片付け方をしたのだ。
それを自分だけならまだしも、それを周囲がいるの中で披露したため、彼女達のもたらしたの沈黙は、また別の沈黙になったのは言うまでもなかった。
『おいおい』と何やら騒がしくなったので、逃げ出したくなったのだが…。
「おおおっ、シュロの彼女達って、やっぱり強いんだなっ」
…突然、歓声があがった。
「そういえば二人とシュロが出会ったのは、不思議のダンジョンだったって、聞いたことがあるぞ」
セリカもカイリも驚いた様子で顔を見合わせているので、どうやら自分の魔力を使って『そう思わせている』というのはなさそうだったので、心から安心していると、こんな呟きが聞こえた。
「…めやがって」
その声に何だろうと振り向こうとすると、突然羽交い絞めにされてナイフを突きつけられた。
「お前等、よくもこのオレを馬鹿にしやがったなっ!!」
良く見ると『B』だった。
「あら、カイリ、仕留め損ねたの?」
「おいおい、いくら何でもシュロの住んでいる村でそんな事するかよ」
ここに人質がいるというのに、二人の魔王にとっては些細な事なのだろうか、カイリは『B』にうんざりしながら言った。
「お前、あんなに高く放り投げられておいて、怪我は一つもないんだ。
お前は手加減されたのにも気付かねえのか?」
「うるせえよ、だからどうしたってんだよ。
なめられて黙っていられるかっ!!」
さらにナイフが自分の顔に接近してきたが、カイリはおどけながら答えた。
「誰が人質をとるような男を味見するもんかよ」
「…カイリ、言葉が汚いわよ」
『あはは』と周囲の笑い声が気にくわなかったのだろうか、とにかく『B』の怒りは頂点に達したのだろう。
「っ!!」
頬に軽い痛みが走った。
「お前な…」
「へっ、こっちには人質がいるというのを忘れるなよ」
おそらく頬を切りつけられたのだろう、セリカもカイリも黙ったのがいい気になったのか『B』は調子に乗って言った。
「謝るんなら、そうだな、そのまま服を脱いでもらおうか…」
へらへらと笑う『B』の態度に流石にカイリもガマンの限界に来たのだろう…。
「待ちなさい、カイリ」
『一瞬』
その表現が正しいくらいのカイリの『光速拳』が、セリカの一言で『B』の顔前でピタリと止まった。
「な、何なんだよっ、お前等っ!!」
それだけでこんな人質をとっても何の意味も持たない事が『B』にもわかったので、大声で聞いたのだろうが、カイリはそんな事は構わずセリカに聞いて来た。
「何で止めるんだよ?」
「私に考えがあるからよ」
そういって、セリカは『B』に捕まっている自分に聞いてきた。
「シュロ君、どっちに助けてほしい?」
「こんな時に何をのん気な事を聞いているのですか?」
「私もね、貴方を傷つけた『アレ』を許せないの、だから、貴方はどっちに助けられてほしいかしらって、貴方に決めてほしいのよ」
すると羽交い絞めしている『アレ』、もとい『B』が恐る恐る聞いて来た。
「お、おい、まさか、あの娘も…」
「はい、カイリ以上か以下かは知りませんが、家屋破壊をするのは普通に目にしてますから、外見以上に…ね」
「あら、私は、カイリより上よ?」
男同士の会話に割り込んでほしくなかったが、この事が『B』にとってよほど衝撃的だったらしい。
「お、おい、助けてくれよ」
「だったら、人質なんかとらずに逃げればよかったじゃないですか」
「相手が魔王並みに強いとは思いもよらなかったんだ」
一瞬、噴き出しそうになったが、この命乞いは演技ではないのがわかった。