第十一話 シュロの災難
シュロ、奴隷決定っ!!
この噂が魔界全土を揺るがせ、一週間が過ぎようとした時、シュロは…。
「38度7分、シュロが風邪を引くなんて…」
…寝込んでいた。
「何か悪いものを食べたとか心当たりはある?」
『ママ、今日ね。セリカって魔王の一日奴隷になるんだ』
寝込む理由はこれだろうと頭に浮かべると実際、頭痛がした。だが、普段は『ママ』と呼ぶわけでもなく、大体こんな理由、誰が信じるだろうか言える訳もない。
「母さん、心配ないよ。これくらい大した事ないって…」
「だめよ、風邪を甘く見たら〜。今日は休むって、母さんから長老に言っておくから、シュロは寝てなさい」
バタンッ
そんな感じでドアを閉められ、落胆するのは風邪を引いているからだろうか、しばらく天井を見つめる事にした。
考えてみれば風邪などで休む場合、店の方はどうすれば良いのだろうと話し合っていなかった。
そんな事に気付いてしまっていると、長老に言ってきたと母さんが帰ってきたので聞いて見る。
「母さん、誰かに会わなかった?」
「そりゃ、ご近所さんくらいはねえ〜」
「そうじゃなくて、白髪で昼間なのに普通に外を出歩ける中年ヴァンパイアとか、多趣味なオークとか出会わなかった?」
「何を言ってるの。そんなのに出会うわけがないでしょう?
…きっと疲れてるのね〜。もう寝なさい」
そんな感じで自分の部屋を出て行った母さんを見送り、結局、どうする事が出来ないのがわかったので、ワケを話して許してもらおうと腹を括る事にした。
そうなるとやる事は一つ、眠る事だ。日は高かったのでカーテンを閉めようと窓に…彼女はいた。
「……」
何も言わず、しばらく容赦なく睨みつけていた魔王は口を開く。
「ふ〜ん、シュロ。逃げるなんて良い度胸しているじゃない…」
「すいません、セリカさん、風邪引いているので、今日は休ませてもらえますか?」
「罰ゲーム当日に、風邪を引くのは人間が良く使う手でしょう。
そんなのが魔界で通用するなんて…って、ホントに風邪引いているのね」
「見た目でわかるのですか?」
「貴方の魔力が徐々にね、風邪独特の薄れ方をしているのよ」
『なるほど』と頷いていると、後ろの方で声がした。
「シュロ、話し声がするけど誰かいるの〜?」
忘れていた、ここは自宅である。
『しまった』と思いながら、ドアが開かれて入ってきたよ、母さんが。
「どうしたの〜シュロ、誰か来たの?」
慌てて窓の方をみると、セリカは忽然と姿を消していた。
そういえば姿を消す事が出来ると聞いた事があったので、内心安心していると『コンコン』と玄関からノックの音がした。
「あら、誰か来たのかしら?」
そのまま、対応しに行ったが次の瞬間だった。
「きゃああっ!!」
腰を抜かした様な悲鳴があがったので、ドアから覗いみるとそこには魔王が立っていた。
「あ、あのう、どちら様?」
恐る恐る聞く母に、その魔王はこう言った。
「はい、いつもシュロ君が世話になっています。セリカと申します。
シュロ君が風邪を引いたと聞いたので、私の魔法で治して上げようかと思いましてやってきました。」
『ニコリ』とその魔王は我が家にやってきた…。