第十話 待ち構える魔王の様々 その6 完結編
「さて、最後の問題となりました…」
そういってブラドがどこで覚えてきたのだろうか、マイクパフォーマンスを披露して口を開いた。
隣でセリカは勝利を確信していたが、ここで一つ忘れてもらっては困る。
これは自分が考えた勝負なのだ。
始めの勝負で何とかリードを保ち、そして最後までギリギリの戦いを演じつつ引き分けに持ち込むという作戦が最初の作戦だったが、こうリードを取られては『最後の策』を使うしかない。
机の脇を掴み、ブラドに見える位置にて手を『トントン』と叩く…。
「それでは最終問題…最終問題ですが…」
それを見たブラドは『やはり使うしかないか…』と諦めた様な顔をしてようやく出た言葉はまだ躊躇していた。
だが、状況が状況だったのでそれは仕方がない事と理解したのだろう。
「最終問題はですね。
特別ルールになっております…」
これは最後の策だ…。
「最終問題は得点が何と百倍になります」
ルールは早押しで問題を答えるモノだが、この問題は…。
『シュロの妹の名前は何でしょうか?』
と、あらかじめ知っていた。
そこで『シ』と一文字言葉が出れば…。
どんなに反応速度の速いセリカにしても太刀打ち出来ないだろう。
しかし、この作戦、物凄く『問題』を抱えていた…。
最初にして難関はここにあり、セリカ様を怒らせるには十分すぎていた。
カイリは『ケラケラ』と余程おかしいのだろう。大笑いしているが、意外だったのはセリカだった。
『ふ〜ん、別に良いわよ』と、そっけなく答えたのだ、思わず『いいんですか?』と聞くとブラドを一瞥、周囲を眺めながらこう答えた。
「これは貴方の考えた勝負であり、これは作戦なのでしょう?
何にしても、魔王である私に立ち向かうというのは変わりないのだから、私は正面から相手をするだけよ」
そして、『だけど、その前に…』と、今度はファウルに聞いた。
「ファウル、貴方に聞いておきたいのだけど、シュロが私に上げるプレゼントって何なの?」
するとファウルはダロタに相槌をして、何やら一枚の紙切れが入った額縁を持って来させた。
「紙切れ、いや、チケットですか?」
「ああ、そうだ。
その名も『シュロ一日、自由に奴隷券』だ」
「…自由の後に、奴隷って付いてるのですけど、何ですかそれ?」
「そうだな。例えるなら一日奴隷に出来る券だ」
「例えてないじゃないですか…」
でもこれでますます、負けれなくなったのは事実。
深呼吸一つ…。
「では、最終問題…」
絶対に勝てる方程式の中で…。
「セリカ様のお城は何階建て?」
ありえない事が起きていた。
慌ててブラドを見ると、目を逸らす。
「ねえ、シュロ」
そんな中、悠々と『ピンポン』と押しながら、セリカは言った。
「人間の戦争において確実に城を落とすには、まずは外堀から埋めるらしいわよ?」
「正面からって、言ってたじゃないですか?」
しくじった…。
さすがに魔王と言ったところだろうか自分は『店長』という職業柄、ブラドは部下…というより同じ苦難に立ち向かう仲間と思っていた。
…だが、セリカは『魔王』、ブラドとの力関係…というより上下関係がはっきりしているのだ。
そうして、外堀を埋められた城は、国崩しを待つだけと言ったように自分の作戦の崩壊を迎えることになった。
人間というのは不思議なモノで敗けが決まると、自然に肩の力が抜けて足掻く事すらしなくなるというのはホントの様で、自分はセリカの…。
「8階立て…」
という回答を、うなだれて聞いていた。
「悪いわね」
微笑みながら、チケットを手にしてシュロに言った。
「じゃあ、シュロ、来週、一日…よろしくね」
次回、シュロ奴隷決定っ!!
「続くの!?」
さて、次回、シュロ奴隷になります