第九話 哀しき戦士たち その5
今年の初投稿です
「ち〜り〜ゆく♪女達はあ〜いするっ♪男達へ〜♪」
「それ何の歌ですか?」
「この前、地上で流れていた歌だ。
アキ…」
そんな事を聞いていると、ダロタが『ていん』と音を立てて転げ落ちてきた。
この家の屋根裏というのは、元々、屋根裏で何かをするような目的に作られているワケではないのでフローリングではない。
そのため小さくなった自分達にとっては独特の垣根が出来ており、さっきまでその垣根の上を歩いていたワケだが、こんな細い道で2人が立っていたら、ネズミが突進して来た際に危険だと話し合い。
このフロアに目印をつけて、交代で偵察して来てはこの場所に帰ってくる。
見つけたら、片方を呼ぶという作業をしていたのだが、一つ思いついた事があったのでブラドに提案した。
「セリカさんに家ごと吹っ飛ばしてもらいましょうよ。」
「それはもっと駄目だ」
「どうしてですか、一番手荒な手段ですけど一番手っ取り早いですよ?」
「あのなあ、シュロ。
あまりこう言う事は言いたくないがな。
たしかに簡単だ。
たしかに何回か家が吹き飛ぶという事態が今まであった。
だがな、その修繕費は何処から出ていると思っている?」
しばらく考えて、一人の人物が思い浮かんだ。
当然という事なのだろうか…
「まさか、ブラド?」
「流石に気付いたか、その通り私の自腹だ。
いくら宮仕えの身でも、それもそろそろ…底を付いて来てな。」
ああ、なるほどと申し訳なく謝っていると、ブラドは『かまうな』と言うのを聞いていると…。
「だが、考えても見ろ。
そこでお前がセリカ様の為に、ネズミ退治をしたという名目で私がこういうのだ。
シュロは勇敢にも、そのネズミと同じサイズになって打ち倒しましたとな。
そうなると懸賞金も期待できるというモノだ」
どうも狙いは『ある一部分』がしめているようなので、大切な事を言っておく。
「ブラドさん…、その人が負けるって考えた事あります?」
思わず弱気になるのもワケがある。
…ブラドと会話をしている途中で音がしていた。
実際はとても小さな音だったかもしれない、だが身長5cmの自分達にとってそれはとても大きな音だった。
ゆっくりと振り向きながら、手にした剣を握り締める。
「いや〜、よくいらっしゃいました」
といった感じのヤケに腰の低いネズミが出てきた。
ブレスを吐き出すそうだが…
身体は痩せ細っており…
『弱そう』
「あっ、すいません…
この場所、日光当たるので、この日陰側でお話出来ませんかね。
私、日光に当たると立ちくらみが激しくて、激しくて…」
やたら虚弱体質のネズミを見て…
『勝てる』
「あなた方が来た理由はわかります。立ち退けというのでしょう?
ですがね…魔王セリカがネズミ嫌いだというのは、私どもでも有名でしてね。
それを『利用しようと何て考えてはいません』が、魔王が立ち寄る店に『勇気のあるネズミ達と称賛されようとは思ってはいません』けど…。
ど・う・し・て・も、立ち退けというのなら、それなりのモノを払ってくださいよ」
腹黒いネズミに安心してこう思った。
『やっちまおう』
そして、こう言った。
「やっちまえ!!」
「えっ、えええ、ちょっ…ぶっ!!」
言うのが早いかダロタの走り込んでからの見事な頭突きがネズミのアゴに命中する。
「いき…、ぎゃあああ!!」
そうして…。
「リンチだな…」
「失礼ですね。戦法といって下さいよ。
人間の狩りは、集団で行なうのが基本なんですよ。
大体、ボスが現れたら集団で戦いを挑むのはRPGの基本でしょう?」
戦いを正当化していると倒れていたネズミがピクリと動いてこう呟いた。
「ふふふ…無駄な事を…。
私を倒しても、あの御方さえ生きていてくだされば、また第二、第三の私がお前たちの前に現われるであろう。
それまでこの一時の勝利に浸っているがいいわっ!!」
そのネズミは、まるで中ボスのような事を言い出した。