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シュロの悩み事

 唐突だが…。


 シュロの指輪について、説明をしよう。


 『ワナ作りの指輪』


 その名の通り、効果はダンジョン内における『ワナ』を作る指輪である。


 だが、その効果は『作る』という構成上、


 仕掛けられた『ワナ』を見る事も出来るという効果もある。


 さて、それが日常でどう作用するのか…と言いますと…。


 「へへ~ん」


 放課後、同級生のゲンタが膝ほどの穴を掘り、敷物を敷き、そこに丁寧に土を被せる。


 「ゲンタ特製 落とし穴の完成だ!!」


 こんな感じで元気良く強調するように、彼の落とし穴は得意技であり。


 実際、見分けがつかない。


 のだが…。


 シュロには、通用しない。


 「お~い、シュロ、こっち来いよ」


 ゲンタはそう言う。


 「……」


 だが、シュロには見えていた。


 その地面の落とし穴が…。


 「どうしたんだよ~」


 しかも2カ所…。


 ゲンタの笑顔が分かった上で言うが、このゲンタが自分を陥れるためにこんな落とし穴を作ったのでは無いのは、初めてではないので知っている。


 言うなれば好意の類いである。


 「……」


 だが、見えるワナに嵌まるのは、心理的に気分が悪くなるものであり…。


 「うわ、ゲンタ、また貴方は!!


 勘弁してくださいよ…」


 「へへっ、引っかかった~」


 もう一度、引っかかるべきなのか、判断する頃には…。



 ……。



 「あの、セリカさん、見え見えのワナに引っかかるって、辛いですね?」


 魔界において、営業終わりには、感慨深くなるものである。


 「いきなりの第一声に、何、言ってるのよ?」


 セリカも、シュロの本日の営業終わりの一言が、コレなのだから呆れて見せる。


 「そんなの引っかからなくても良いじゃ無い?


 歩幅が合わなかったとか、偶然、踏み抜かなかったとかすれば?」


 「そうなんですけど、この話、私にとっては、それだけの話ではないのですよ。


 例えば…」


 シュロは回想を広げる。



 ……。



 「よう、シュロ、今日も頑張ってんな?」


 ダンジョンにて、セリカの待ち合わせの場所に向かう際、シュロは冒険者に出会う。


 「ああ、どうも…」 


 ここはダンジョン一階、地上に近い所為か、その際に冒険者に会うという事は良くある事だった。


 シュロは魔界で仕事をしている事は当然、秘密である。


 なので、その階層で探索をしているフリをする。


 「おい、なら、これ拾ったんだけどさ。


 俺、使わないから。


 シュロ、お前にやるよ」


 「銅の斧ですか、50ゴールドですね」


 「瞬時に計算出来るんだな。


 でもよ、お前は生活のためにここにいるんだろ、やるよ」


 「いいのですか?」


 「構う事ねえよ。


 頑張れよ」


 いつもの事なので、冒険者はそのまま次のフロアに向かおうとする。


 が…。


 その通路を塞ぐように落とし穴が、仕掛けられていた。



 『危ない』



 感覚的に、この停止が行き届くほどの時間と間合いがあった…。


 しかし、普通の人間に『ワナ』なぞ、見えるワケがないのだから、シュロは黙って見せるのは。


 「うおっ!!」


 バレないために黙る事であった。

 


 ……。



 「あの落とし穴って、ダメージを与えないにしても、私からしては、無視するのってつらいのですよ?」


 「なるほどね」


 セリカはシュロの作ったワナスイッチを見つめながら納得に至っていた。


 「そういえば、セリカさんって、ワナとか見えるのですか?」


 「普段は見えないわよ」


 「え、そうなんですか?」


 『魔王』が見えない事に少し驚きを感じていると、『魔王』だからだろう、言いつくろう。


 「それは魔力を高めれば、見えるわよ。


 でも、大抵…」


 セリカはスイッチを机の上に置いて、溶け込ませる。


 シュロからしてみれば『見えている』のだが、セリカは構わずそこにあったスイッチを押す。


 すると木の矢が飛んできた。


 矢じりは無いが、セリカの横目から飛ぶ、確実に不意つくような形で飛んで来るのだからダメージはある。


 だが、セリカは飛んでくる矢を軽々と掴んで反応して見せた。


 「前にブラドもやっていたでしょ?


 この通り、反応出来るから、魔力を高めるほどではないのよ。


 貴方もやってみる?」


 「出来ませんよ。


 ですけど、この問題、それだけの話でも無いのですよ」


 「あら、まだあるの?」


 「まあ、ワナって、言ってみれば…。


 セリカさんも、触ればワナが作動するワケなのですから。


 モンスターも引っかかるワケじゃないですか?」


 「まあ、そうね…」


 シュロは三度目の回想を、広げた。


 「便利ね、それ…」



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