魔王は一度、勇者と対面してもいいかもしれない その6
「私の番ですな…ん…?」
しかし、ブラドは動きを止める。
「シュロ、少し聞いて良いか?」
「何でしょう?」
「俺の後ろ、何かいる?」
「はい…」
瞬間、ブラドが何故、止まったのかシュロは理解した。
「セリカさん、いますね」
それを聞いたブラドは、ため息混じりに聞いて来た。
「どうしてる?」
シュロはじっと見る中、経験上、予測できる事があった。
「見ない方が良いと思います」
ちなみにこの時点で、同じ席に座っていた魔王二人も『セリカ(それ)』に注目していた。
「い、嫌だなぁ」
そのおかげでブラドは、滝のように汗を流していた。
そして、彼の首筋にひんやりと、
「ブラド、ちょっと来なさい…」
そして、彼女の細腕から想像出来ないほどの腕力をブラドが味わう。
「セ、セリカ様、痛いです」
カイリの魔力抑制の結界で使えないのか、
「ねえ、ブラド、少し聞いて良いかしら?」
「ななな、何でしょう!?」
普段見えるクビが明らかに、細くなっているの中、ブラドは苦しそうに答えるしかない。
「力が100以下の魔王っていると思う?」
「い、今のセリカ様が…」
ブラドにしても抵抗はしているのだろう。
そんなセリカはブラドの首根っこを掴んで外に連れ出す。
扉を閉めた途端、窓の向こうで、ブラドを片手で持ち上げて、直接、雷を落とすセリカの姿が見えた。
落雷独特の突風が吹くが、魔王二人は平然としていた。
戻って来たセリカは、少し、焦げ臭い。
そんな中、戻ってくるセリカに、バージルは肩をすくめながら答えた。
「セリカよ。
配下のしつけにしては、やり過ぎではないかな?」
「あら、エルフの王。
私の国の事情を関わらないでほしいわね」
構うこと無く、ブラドのいた席にセリカは座り、機嫌悪そうに答えた。
「こんな場所の家を買い取って店を設けるなんて…。
上から目線のエルフが、相手をするワケが無いじゃない。
だからこその、お仕置きよ」
そのままブラドのいた席に座り、ゲームは続行するつもりらしい。
彼女が勇者に単純に攻撃をするのを見て、バージルはこう答えた。
「うむ、私はキミの配下の失態を、拭うつもりはするはない。
しかし、今回ばかりは、致し方あるまい?」
セリカはバージルの諭しに苛立ったのか、
「バージル、貴方のドラゴンもらうわよ」
攻撃したカードが『ラミア』だったので、、バージルにドラゴンを寄越させる。
ルールに従っているからだろうか、バージルは気にする必要なく、カードを差し出す。
そして、バージルの出番となる。
彼は勇者を攻撃するために『ネクロマンサー』のカードを出して、トンと突いて、注目させて見せた。
「腐死使い。
そんな輩共が、我が領土および、カイリの国境付近で暴乱を起こしているではないか?」
「ふ、腐死使い?」
シュロは魔界において無知だったが、物騒な呼び方に緊張して見せた。
だが、バージルはそれを理解した上で頷いて答える。
「うむ、死人を意のままに、使役する輩の事を指す」
「厄介な事なのは、魔力の低い生きてるヤツらを噛んで事で感染させて、使役させる事も出来るって事だな。
力はねえけど、そんなヤツらを使役する奴が集団で事を起こしてみ。
問題になるだろ?」
頷くバージルとカイリの解説に、シュロは、さすがに強ばりを見せる。
「だ、大丈夫なんですか?」
バージルは魔王らしく、いや、王らしくなだめる。
「だからこそ、セリカの配下は、ここを選んだのだよ」