魔王は一度、勇者と対面してもいいかもしれない その4
「おい、ブラド、メンツが揃わねえから混ざれ」
と、シュロがボードを広げて用意している間、カイリはそう言って、カードをシャッフルしていると、何かに気づいた。
「いけね、コレを忘れてた」
嬉々として彼女が指を鳴らす。
すると独特の空気を変わり方を感じ取った、バージルは目を細める。
「これは魔力を抑制する結界か?
それも随分と重たい、結界を張れるのだな?」
魔王は、魔王に対し、魔王らしい挑発をする。
「うるせえ、ほら、配るぞ」
だが、カイリが悪態を付くだけ付いて、参加者四名にカードを五枚配る。
「そもそも、やるとは言ってないのだが…。
シュロ君、コレはどんなゲームなのかね?」
「今から、勇者がやって来ますので、私たち魔王軍の幹部…」
シュロは初めて出会う魔王に対して、気を損ねるだろううかと、もう一人のカイリを見た。
「ケラケラ…」
笑っていらっしゃる。
、「ま、まあ、幹部になって、この勇者を倒してしまおうというゲームなんです」
ボードに置かれた勇者をつつくが、バージルは呆れていた。
「この程度で、勇者とはな」
魔王らしい見解だった。
「ドラゴン二枚に、ネクロマンサーに、ゴブリン二枚、このカードは何なのだ?」
それを聞いた、カイリは、にやりとして言う。
「へへ、とりあえず、サイコロの出目で順序を決めようぜ?」
手渡された少し大きめで半透明なサイコロをカイリから受け取ると、バージルは驚いて見せる。
「随分と贅沢なサイコロだな」
無理も無い、このサイコロは、
「へっ、レッドドラゴンのウロコで出来たサイコロなんて、シュロの店にしかない一品だぜ?」
「赤き龍、もしかして、レクターの事かね!?」
この解答をシュロに求めるのだから、魔王相手に遠慮がちに答えた。
「い、一応、本人の許可を得たうえで、もらいました。
作ったのも、レクターさんです」
これにはバージルは興味を持ったのか、
「確かに、キミと赤龍王との交流は耳にはしていたが…」
モノの価値を知るバージルという魔王は、丁寧に転がして見せるが、
「た、確かに、あの人のウロコは『自由に使って良い』という話だったので…。
たくさん、もらいましたからね」
それにカイリは『ムッ』として答える。
「言っとくぞ、シュロ。
お前が、そのウロコの使用用途を考えてない所為でな。
セリカの宝物庫に大量に保管されてるんだからな?」
「い、いえ、それは知ってますよ。
その所為で、倉庫を圧迫して、私としては肩身が狭いのですから」
その解答に、カイリは呆れて言う。
「いいや、お前はやっぱり、わかってない。
バージル、私の代わりに説明してみ?」
シュロが見ると、バージルの表情が明らかに曇っていた。
「シュロ君、キミは確かに、この恐ろしさをわかっていないようだな?」
少し殺気混じりだったので、身の毛のよだつシュロだった。
「彼のウロコは、ドラゴンの中でも最上位の硬度、最高位の魔力耐性を誇るといわれている。
だからこそ、王という名称なのだよ。
そのウロコを、大量に保有しているという話だ。
これらのウロコが鎧に、剣に、盾…。
そんな武具に加工されて見たまえ、一兵士にどれほどの優位があると思うのか考えた事があるのかね…?」
バージルは冷静に言うが、そこは魔王らしくシュロを睨み、萎縮させる…。
「……」
シュロは血の気を引いていると。
「だが…」
この初老の魔王はサイコロを見つめて、カイリに言った。
「カイリ、そんな硬度を誇ったウロコを加工する技術が、セリカの国にあると思っているのかね?」
バージルはサイコロをマジマジと見つめ、転がして、こうとも言った。
「さしずめ、その価値を知って集めてはみたモノの、加工する技術がないのなら。
彼の言う通り、セリカの城の倉庫を圧迫したというのが、現実なのだろう」
そして、出目を見て言った。
「しかし、そのドラゴンも、こんな遊戯に興じるとは…」
そうして、興味が出てきたのだろうか、素直にサイコロの出目に従い。
カイリ、シュロ、ブラド、バージルの順に始める事になった。
「じゃあ、一番手の私がやるぜ」
そして、勇者に攻撃をするのだが…。
「よし、バージル、お前の持ってる。
ドラゴンを寄越せ」
バージルの最初の気分を逆なでしていた。