いつか来る、対策をする者達 その3
だが、それでも日は昇ると言えば、良いのだろうか?
嫌でもその日はやって来る。
というのは、誰でも経験があるだろう。
「じゃあ、行ってきます」
「ア、シュロ、イッテラッシャイ」
その日は、母親もどこかぎこちない仕草を見せてくる。
そして、最近、引っ越してきた魔王二人が、どこからとも無くやって来て、シュロと歩くが。
「あの、お二方?」
二人の魔王は、こっから気づかない。
「だから、こういうのが、誤解されてるのですよ?」
シュロはそうは言うが、
「そう言うなよ、こういう時だからこそ、いつも通りを見せないと駄目なんだって」
「そうね、噂されているからこそ、噂通りを演じないと周囲が気づいて台無しになるわよ?」
魔王二人の正論に、シュロは付き合…。
「なにやら屁理屈で誤魔化されているような感覚がするのですが?」
…うのにも、抵抗があったのは言うまでも無い。
これは正論である。
「イラッシャイ、サンニントモ、キョウハイイテンキダネ」
道具屋の店主、雑貨屋のゴドーの弟、通称、色違いのコトーまでも態度がおかしかったのだ。
「コトーさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃねえよ。
こういうの慣れてねえんだからな」
「す、すいません」
店内に入ってから、シュロは謝り倒しである。
「あら、怒ってませんの?」
だが、コトーからは怒りを感じなかったのでセリカが聞いてきた。
ちなみにセリカが言葉使いが変わっているのは、この村限定の態度である。
と、カイリは気味の悪いモノを見るような表情をしていた。
「まあ、しょうがねえだろう。
シュロが不思議のダンジョンで探索している事なんざ。
村の秘密でもあるからな」
「でも、確かこの村は成人を迎えるまで、探索をしちゃ駄目だったんじゃなかったか?」
カイリの指摘に、コトーは首を振る。
「確かに掟を破る事は悪い事かもしれねえ。
だが、これは昔無かった掟だそうじゃねえか。
そんな掟が生活を守ろうとするのに害があるならば、そんな掟に縛られて生活出来なくなって暮らせなくなるのは、村にとってはいずれ害になる。
そういう事はなってならんってな。
それが長老の考えなのさ」
それには、二人の魔王は感銘深く頷くのはシュロしか意味合いを知らない。
「まあ、とにかく三人とも、今日はよろしくたのむな」
そういってコトーは自分の店に招き、説明を始めた。
「とりあえず、三人にはこのテーブルで、薬草作りをしてほしいわけなんだ」
テーブルの上に、人数分だろうか三台の量りに数々の薬草が並んでいた。
それを見たシュロは、顔色を変えていた。
「どうしたのシュロ君?」
セリカに気味が悪い表情を見せはするが、
「考えてみれば、地上での仕事初めてなんですよ」
するとカイリが笑いながら答える。
「そんなん、俺たちだってそうだぜ?」
「そりゃ、魔王ですからね。
薬草なんて使わないでしょうし…」
先週まで見たことがなかったのだからと、思うあたりでシュロは思った。
果たして彼女たちは、薬草を作れるのだろうか?
「不安だ、とても不安だ」
当たり前の不安を口にすると、コトーは自分の脇を突いて言う。
「シュロ、おまえの母さんが家を出たそうだから、そろそろ始めるぞ?」
そうして、シュロにとって初めての仕事が始まろうとしていた。
一方、魔界では、イインチョがキョロキョロしながらブラドに聞いてきた。
「今日がそうでしたね」
「ああ、例の件でな。そこに行ってる。
用事があったのか?」
「いえ…」
そう何でも無いというが、変な間だったのでブラドはどうしても気になって聞く。
「大丈夫なのか?」
お盆を抱えたダロタから紅茶を受け取り、イインチョは答えた。
「いえ今回も大変でございますよ」