いつか来る、対策をする者達
「急に呼び出してすまんのう、シュロ」
その日、シュロは長老に呼びされていた。
学校帰りで、日も沈もうとしているため、長老の部屋は少し薄暗い。
丁度良く、長老の顔がうかがえないので、少しシュロを緊迫させる。
そして、長老はそれを読んだのか。
「どうかの、不思議のダンジョンは?」
笑みを浮かべるので、シュロは少し緊張が解けた。
「はい、最初の内は緊張も、危ない事もありましたが、冒険者の人たちにも助けられているおかげもあって、何とかやってます」
「ほほ、それは結構、ワシもそう言ってくれると、特別に許した甲斐もあるというモンじゃ。
実際、シュロよ。
お前の『おかげで』という言葉が、人間的にも成長したと思える。
それは素晴らしい事じゃが…」
長老は優しく、だんだんと表情も曇りだした。
「何か不味い事があった?
もしかして、周りや家族にバレた!?」
シュロは焦りを見せる。
彼が警戒すべき事、それは家族や同年代の友達に、自分が不思議のダンジョンでアイテムを集めて、それを稼ぎにしている事だった。
例外として、学校の関係者、冒険者達には話を通しているのだが。
彼は特別に許しを得て、こんな事をしているのだから、無理もなかった。
だが、長老は首を振っていた。
「それは無い、安心せい。
いや、じゃが、関係あるのかのう?」
「曖昧ですね?」
「その辺は、引き続き警戒してほしい事には変わりないからのう。
じゃが、シュロよ。
お主、この働きのおかげで、二人の女性と付き合っておろう?」
シュロの脳裏に、二人の魔王が立つ。
「ちょ、長老、それは!!」
シュロは、慌てて誤解を解こうとするが、
「照れんでもよい」
どうも、話が通じなかった。
これはセリカの所為だろう。
シュロはこの際、最近、引っ越して来た事も話はするが、
「なんじゃ?」
と長老が、突然、呆けてみせる始末である。
セリカの魔力で、物事の認識を曖昧にしているのだろう。
長老は、先ほど自分達が何を言ったのかも、認識出来ないまま、本題に入った。
「まあ、お主の付き合い方をとやかく言うつもりはないがの」
しかも、誤解は解けてないまま。
「不思議のダンジョンまで、三人がくっついて行くとなるとの。
まあ、この通り、村の噂にもなるわけじゃし、さすがに心配するのじゃよ」
シュロの顔が曇る。
「お前のお母さんが?」
シュロの顔が曇る曇る。
「…お主の態度で、わしも心境は察するがのう。
もともと、お主の母さんも、冒険者から声を掛けられるというのは、気にもなっていたそうじゃ」
「ど、どうしましょう」
様々な不安が頭をよぎるシュロに、長老は答えた。
「安心せい、手は打ってある」