第九話 哀しき戦士たち その1
『学園生活』をシリアスに進めてきてましたので、骨休みにちょいと執筆してみました。
ちなみに作者、この私の意向で、もとあった第九話ですが、編集させてお送りいたします。
人間と言うのは、たとえどんな『異常』とも呼べる環境でも、最初は不慣れにすごしていても、徐々に慣れてしまうものである。
それはここ、魔界にいるシュロという人間も同等の事が言えるであろう。
「じゃあ、そろそろ店じまいの用意をお願いしますね。」
と、明らかに自分より年上のヴァンパイアに命令して、自身はオークと共に内部の片づけを始めている。
そう、この店には人間とモンスターが共に経営している。
外部からみれば、それは異常極まりないだろう。
だが、人間慣れてしまえば、どうって事はないというのを最近知った。
その証拠に、3人は文字通り『一休み』している。
ブラドは本を読み、ダロタは何かを探していた。
「シュロ、そこにある手鏡を取ってくれるだか?」
鏡が自分の近くにあったので近くに滑らせる様に投げると一言お礼を言って、バリカンを手にしたので、今度は自分が何をするのだろうとダロタを見ていると、ダロタはおもむろに兜を脱ぎ出した。
あの営業時間でも外す事のなかったダロタの兜が今、外されようとしている。
貴重な光景に慣れなどない。
気が付くとブラドも興味深いのだろう。
本を机に置いてそれを見ていた。
ゆっくりと外されたそこには…。
「モヒカンだ…。」
初めてオークの髪の毛は赤い毛なのだと知った時、次に浮かんだ言葉はそんな一言だった。
「んだ、912歳の頃から手入れを続けているだ。」
そして、ダロタはバリカンを手に鏡を見ながら自分の頭を剃り始めた。
オークの種族上、髪の毛は薄いのだろう。
ダロタはポツポツと生えている無精ひげのような髪の毛とシワだらけの頭を『ウィ〜ン』と撫でていると『ジュジュ』と毛が剃れた音がしていた。
このオーク、もといモヒカンオークは、さっき『912歳』と言ったが正確には…。
人間で例えると5歳だ。
ちなみにさらに正確に年齢を出すと現在『1460歳』、人間換算で『8歳』だ。
長寿なオークもいるらしいのだが、その年齢を出すと…。
66612歳…。
ようは計算するくらい面倒な年齢のオークもいるらしい。
「あら、もう営業お終い?」
この国の魔王、セリカの来店で店内は更に異常さを増してしまうが、こんな状況も慣れてしまった。
「あっ、はい、何か用ですか?」
「あら、まるで用が無かったら私は来ていけない様な言い方ね?」
セリカは、そのまま机に座ろうとしたその時だ。
「シュロ…。」
すると、セリカは近くにあった木彫りの魚を咥えた熊のどこにでもある彫刻を手にする。
「動かないでね…。」
ブラドが土産に買って帰ってきた、それを手にして振りかぶり何をするのかも聞こうとする自分の意見も待たずそれを投げる。
ガシャン…と、自分の後ろにある窓ガラスを投げた形のまま貫通させた。
「急に、何するんですかっ!?」
「ちぃ、逃げられたわね…。」
おそらく何かを排除する為に、それを投げたのだろう。
「あ…。」
しかし、次の瞬間、目に入ったのは…。
「あら…。」
もう一度いうようだが、
『貴重な光景に慣れなどない。』
だが最悪な事だが、自分の思考ではそれを言葉に出来なかった。
そこにいるのは、窓ガラスが割れた音に驚いて反応した勢いで悲劇が起きてしまったオークがいる。
自分より年上(年齢不詳)のブラドが顔を激画にして、こう叫んだ。
「ダーロターッ!!!!」