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原っぱに集まる者共 その3

 「ようこそ、お悩み相談室へ」


 「あの一つ、話を聞いてもらってもよろしいでしょうか?」


 「あ、はい、お客様のプライバシーは守りますので、気兼ねなく」


 「では…」


 「ああ、その前にお客様のお名前と、よろしければご職業を教えてもらえますでしょうか?」


 「ああ、私、『レクター』〔本人の希望により伏せさせてもらいます〕と申しまして…。


 レッドドラゴンをしております」


 「……」


 「よろしいかな?」


 「…ああ、はい、大丈夫ですよ」


 「私、かつて様々な文明を滅ぼして来たドラゴンとも呼ばれて…まして。


 まあ、周りにも『赤龍王』なんて呼ばれていた時期もありまして。


 私にも自覚はあったんですが…」


 「何かあったのでしょうか?」


 「最近では、ですね。


 バンパイアも消し炭に出来ないので、身の引き際を考えた方が良いのでしょうか?」


 魔界のどこかには、モンスターの悩みを相談する場所があるという…。


 ……。


 「うん、ここに相談にでも行こうかな」


 レッドドラゴンの意味のわからない呟きは、空から返事が返ってきた。


 「一体、何を考えているのか、聞きたくもねえが、相変わらずロクでもない事、考えているな」


 カイリがセリカと共に、手の甲をさすりながら降りてきた。


 「やれやれ、勘弁してくれよ。


 見つけたと思ったら、目の前に凝縮した火炎が迫ってくるんだからよ」


 「なるほど、どおりで炎の軌道が突然、変わったわけだな。


 カイリ君、大丈夫だったのかね?」


 地面を『焼く』のではなく『抉る』ような炎。


 無機物を死滅させた独特の臭いが、未だに漂っていたので、レクターは心配したのだろう。


 だが、カイリは平然として答える。


 「打ち返してた手が痺れたくらいだぞ?」


 レクターは、大柄の胴体をぐるりとシュロに向ける。


 「レクターさん、そんな目で私を見ないでください」


作業を再開しようとするシュロの姿を見て、今度はセリカが聞いてきた。


 「ねえ、シュロ、どうしてレクターがそんな事をしたのか、大体、理解はしたけど…。


 私はレクターのやり方は頷けるわよ?」


 「そうそう、まあ、レクターのおっさんもやり過ぎっちゃ、やり過ぎだけど。


 こんな瓦礫、再利用も出来ないだろ?」


 残った瓦礫(ブラドも含む)も、カイリは軽々と引っこ抜いて見せていると、


 「いえ役に立つことはあります」


 カイリの背後に光る。


 メガネではなく、デコの姿。


 「イインチョ、いきなり現れんなよ」


 驚くカイリを尻目に、彼女はシュロに呆れて見せる。


 「まったく貴方の周囲には破壊者しか集まらないのですか?」


 「誰かね?」


 どうやらレクターは初対面らしく、イインチョは礼儀正しく、相変わらず濃淡のない話し方で自己紹介をすませると、説明をし始めた。


 「簡単に申しますとこの瓦礫は巣の素材として役立つのです」


 「巣の素材、何のだね?」


 「大型の生物の巣といえばわかりますか鳥類果てはドラゴンまで」


 「なるほど、だが、言葉のわからぬ下等なモンスター共が、商売を理解しているとは思えんがね?」


 レクターの問いに、


「ですが他の人に生態系を操らせる事は可能です」


イインチョは首を振ってそう答えた。


 「生物とは温度および環境で育つ事は地上で立証されておりますそこで各地の魔王の中にはその点を利用して自分の戦力に加えている者もいるようですね」


 「ほう、それはまるで我々が単純な生き物だと、言いたいようだね?」


 熱されたはずの大地に、シュロは冷たさを感じる。


 レクターの恐ろしいところは、この気難しさにもある。


 そして、


 「私は事実を言っただけです」


 この自分の周りには、どうして恐れるモノがいないのだろう。


 「凹凸凸…!!」


 レクターの言語が、ドラゴンの咆哮に戻り、広がった翼の脈面で感情を現す。


 明らかに先程とは違う威力を持った濃厚な火炎を吐き出した。


 が…その閃光より輝く額が見えたので、カイリはシュロの代わりに呟く。


 「あんなの跳ね返すなんざ、どんなデコをしてんだ?」


 だが、イインチョは気にする様子は無く、メガネからデコを光らせる。


 「これでも魔王の娘という設定ですのでこれくらいは出来ますよですがレクターさん話は最後まで聞いてほしいものですね」


 平然と答えたのでレクターは。


 ぐるり。


 とシュロに首を向ける。


 「ですから、もういいですよ」


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